胸や脇のアトピーの原因は呼吸器を見る

冬になると、なぜか胸や脇のあたりがかゆくなる…。保湿クリームを丁寧に塗っても、なかなか改善しない。そんな経験はありませんか?多くの人が、これを単なる乾燥による肌トラブルだと考えがちです。
しかし、そのしつこいかゆみの原因は、実は皮膚表面の問題ではなく、もっと体の内側、特に「呼吸器」からのサインかもしれません。この記事を読めば、長年悩んでいたその不快感の、思いもよらない根本原因と、今日からできるセルフケアのヒントが見つかるはずです。

そのかゆみ、実は「肺の疲れ」が原因かもしれない

胸や脇のかゆみは、肺を含む呼吸器系の負担が原因で起こることがある
これが、この記事でお伝えしたい最も重要な結論です。にわかには信じがたいかもしれませんが、体の内側で起きていることが、皮膚の症状として現れることは珍しくありません。
では、なぜ呼吸器の負担が、胸のかゆみに繋がるのでしょうか。例えば、胃の調子が悪い時にみぞおちのあたりがキュッと硬くなるのと同じように、私たちの体は内臓の不調が体表近くの筋肉を緊張させることがあります。呼吸器に負担がかかると、その影響で胸周りの筋肉が知らず知らずのうちに収縮し、硬くなってしまうのです。
呼吸力に負担かかったら胸の筋肉が縮んできます。なので疲労で疲れたっていうもの以外にもこの胸の筋肉が硬くなって反応で硬くなることによってここに痒みとか湿疹とかそういうのが出ることもあるんです。
通常、かゆみがあれば皮膚科の受診を考えますが、その原因が内臓にあるとは、まさに盲点と言えるでしょう。薬を塗っても治らなかったかゆみは、体の中から発せられる重要なメッセージなのかもしれません。

すべての始まりは「冬の気候」。乾燥が呼吸器を直撃する

冬の「冷え」と「乾燥」が、呼吸器に大きな負担をかけている

では、なぜ特に冬に呼吸器の負担が増えるのでしょうか。その答えは、冬特有の「冷え」と「乾燥」にあります。

まず「乾燥」の影響です。私たちの鼻の粘膜には、吸い込んだ空気の湿度と温度を体内に適した状態に整える「天然の加湿・空調機能」が備わっています。しかし、冬の極度に乾燥した空気は、この鼻の機能の許容量を超えさせてしまいます。その結果、冷たく乾いた空気がフィルターを通らずに直接、気管や肺に届き、呼吸器全体に大きなダメージを与えてしまうのです。特に、口呼吸をしがちな人は、この重要なフィルター機能が使えないため、呼吸器への負担がさらに大きくなる傾向にあります。

次に「冷え」の影響です。体が冷えると、全身の筋肉が緊張し、血流を維持するために心臓にも余計な負担がかかります。この全身の緊張状態が、呼吸器周りの筋肉の硬直をさらに助長してしまうのです。

自分でできる簡単セルフチェック法

あなたの体は大丈夫?呼吸器の負担度がわかる3つのチェックポイント

自分の胸のかゆみが、本当に呼吸器からのサインなのか気になりますよね。ここで、誰でも簡単にできるセルフチェック法をご紹介します。以下の3つのポイントを確認してみてください。

1. 呼吸の深さを確認する 無意識の状態でも、息苦しさや浅さを感じることなく、スムーズで深い呼吸ができているかを確認します。

2. ふくらはぎの弾力を確かめる ふくらはぎを優しく掴んでみてください。パンパンに張って痛みを感じるのではなく、適度な弾力と柔らかさがあるのが理想です。

3. 背面全体の緊張度を見る 鏡の前に立ち、自然な姿勢を確認します。猫背で肩が内側に入っていたり、肩甲骨周りがガチガチに固まっていたりしないか見てみましょう。

なぜこれらの部位で判断できるのでしょうか。それは、体が冷えや乾燥といった全身的なストレスにさらされると、その緊張が特定の場所に現れやすいからです。例えば、背中の大きな筋肉は緊張で硬直しやすく、猫背などの姿勢の乱れに繋がります。また、「第二の心臓」とも呼ばれるふくらはぎの状態は、冷えによって滞りがちな全身の血流を反映します。これらは、季節の変化による影響を最も受けやすい体のバロメーターなのです。

体の声に耳を澄ませる

冬に繰り返す胸や脇のかゆみは、単なる肌表面の問題ではなく、冬の厳しい「冷え」と「乾燥」によって負担を受けた呼吸器からのサインかもしれません。

この事実を知ることで、今後のセルフケアの視点は大きく変わるはずです。これからは、肌の保湿だけでなく、意識して深い呼吸をしたり、体を芯から温めたりすることも、巡り巡ってあなたのかゆみを和らげる大切なケアに繋がります。私たちの体は、このように常に様々な形でメッセージを送ってくれているのです。その小さなサインに気づけるかどうかで、日々の快適さは大きく変わります。あなたの体は今日、胸のかゆみ以外にどんなサインを送っていますか?一度じっくりと、その声に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。

症例:肩腕部の可動域制限と呼吸機能低下に対するアプローチ

主訴と所見

患者背景と主訴の分析

本症例は、荷物を運ぶという職業柄、日常的に身体へ負荷がかかっている患者様です。主訴である「肩と腕の慢性的な疲労感」は、単なる筋肉の使いすぎによるものだけではなく、より根深い身体全体の不調和のサインとして現れています。本報告では、局所的な症状の背景にある全身の状態を東洋医学的な視点から分析し、根本的な改善に至るまでのアプローチを詳述します。

患者様が訴える具体的な症状は以下の通りです。

• 職業的背景: 荷物を運ぶ業務に長年従事しており、肩や腕に継続的な身体的負担がかかっている。

• 主訴: 肩と腕の関節部分に常に疲労感があり、特に腕を肩より高く上げるような特定の動作において、明らかな動きの制限と硬さを自覚している。

身体所見と東洋医学的見立て

診察を進めると、主訴である肩腕部の問題だけでなく、季節的な要因や内部機能の不調が身体の各所に現れていることが明らかになりました。東洋医学では、身体はすべて繋がっている一つの統一体(ホリスティック)と捉えます。表面的な筋骨格系の問題の裏には、呼吸や循環といった生命活動の根幹に関わる機能の低下が隠れていることが多く、本症例もその典型例と言えます。例えば、東洋医学では胃腸の不調がみぞおちの硬さとして現れるように、身体は垂直方向に関連し合って反応します。同様に、今回の呼吸器系の問題が胸部や背部の緊張として現れているのです。

観察された具体的な身体所見は以下の通りです。

• 筋骨格系の緊張:

    ◦ 肩・腕・胸部: 主訴の通り、肩と腕の関節には顕著な硬さが見られました。特に注目すべきは、胸の大きな筋肉(大胸筋)の強い緊張です。この筋肉は腕を動かす際に重要な役割を果たしますが、硬直することで腕を高く上げる動作を物理的に妨げていました。

    ◦ 背部・アキレス腱: 身体の背面にも力が抜けきっていない状態が見受けられました。特に、寒さの影響で背筋全体がこわばり、その緊張が末端であるアキレス腱にまで及んでいました。背中の緊張は、身体の裏側全体の連携を阻害する要因となります。

• 呼吸器と循環系の状態:

    ◦ 呼吸の浅さ: 冬季の乾燥した空気は、呼吸器系に負担をかけます。本症例では、この影響で無意識に呼吸が浅くなり、深呼吸がしづらい状態に陥っていました。浅い呼吸は肺の十分な拡張を妨げ、結果として肺周辺の筋肉、特に前述の大胸筋の硬直を助長する悪循環を生み出していました。

    ◦ 血行不良: 呼吸機能の低下は、全身の酸素供給能力、すなわち血の巡りに直結します。本症例では、その影響がまず呼吸器の入り口である鼻に現れ、鼻づまりの傾向が見られました。さらに循環不良は末端にまで及び、ふくらはぎにも硬さが出始めていました。

所見の総括と施術方針への移行

以上の所見をまとめると、患者様の主訴である「肩腕の可動域制限」は、単独の問題ではありません。それは、**「乾燥と寒さという季節的要因が引き起こした呼吸機能の低下と、それに伴う全身の血行不良および筋緊張」**という、より本質的な問題が表面化した結果であると結論付けられます。したがって、施術は肩や腕といった局所への対症療法に留まらず、全身のバランスを整え、根本原因である呼吸と循環を改善することに主眼を置く必要があります。

施術内容

施術方針の策定

前章の所見に基づき、本症例に対する施術は、表面的な肩腕の症状緩和と、その根本原因である呼吸機能の改善を二つの柱として策定しました。単に硬くなった筋肉をほぐすだけでなく、全身の緊張を解き、血の巡りを正常化させ、身体が本来持つ自己治癒力を引き出すことを目的とした、多角的なアプローチを実施しました。

具体的な施術手技

実施した具体的な施術内容は以下の通りです。各手技は、それぞれが明確な目的を持ち、相互に作用し合うよう組み立てられています。

• 鍼治療(導入):

    ◦ まず、施術の初期段階として鍼治療を行いました。これは、全身に張り巡らされた経絡(気の通り道)を刺激することで、身体全体の過度な緊張を緩和し、筋肉を芯から柔らかくすることを目的としています。後続のマッサージやお灸の効果を最大限に高めるための重要な下準備です。

• 背部へのアプローチ(緊張緩和):

    ◦ 次に、背中全体に対してお灸による温熱療法とマッサージを施しました。寒さによって生じていた背筋とアキレス腱の緊張を解放し、深いリラクゼーション状態へと導きます。身体の背面の緊張が和らぐことで、呼吸がしやすくなるという効果も期待できます。

• 肺機能へのアプローチ(循環改善):

    ◦ 本施術の核心部分として、肺周辺の胸部に対して独自のマッサージを行いました。これは、硬くなった肺の組織を「スポンジの水を絞り出すようにポンプする」イメージの手技です。このアプローチにより、肺周辺に滞留していた古い血液の循環を強制的に促進し、浅くなっていた呼吸を深く、楽にするための直接的な働きかけを行いました。

施術の総括と結果への移行

今回実施した一連の施術は、鍼、お灸、マッサージという個別の手技の集合体ではありません。これらは、「呼吸機能の低下」という根本原因を解決するために、全身の関連性を見据えて組み立てられた一貫した戦略に基づいています。このホリスティックなアプローチが、患者様の身体に具体的にどのような変化をもたらしたのか、次章で詳しく報告します。

まとめ

3.1. はじめに:施術効果の評価

施術の効果を評価する際は、主訴であった症状の変化だけでなく、患者様自身が体感する全身の変化に注目することが重要です。身体が発する微細なサインを捉え、それが生活の質(QOL)の向上にどう結びついていくかを考察することで、治療の真価を問うことができます。

3.2. 施術による変化と今後の展望

今回の施術を通して、患者様の身体には即時的かつ顕著な変化が現れました。これらを維持し、より良い状態へと導くための今後の目標とセルフケアについても指導を行いました。

• 施術直後の変化:

    ◦ 呼吸: 息が深く吸えるようになり、呼吸そのものが非常に楽になったとの体感がありました。

    ◦ 循環: 鼻の通りが良くなり、空気が「スースー」と通る感覚が戻りました。これは鼻周辺の血行が改善された証です。

    ◦ 筋緊張: 仰向けに寝た際、これまで浮きがちだった背中が床に「ペタペタ」と密着する感覚が得られました。これは、背面の過度な緊張が解消されたことを示しています。

    ◦ 可動域: 主訴であった腕の動き、特に脇周りのつっぱり感がなくなり、スムーズに腕を上げられるようになりました。

• 長期的な目標:

    ◦ 呼吸の質を根本的に改善し、無意識下でも深く安定した呼吸を定着させる。

    ◦ 肩と腕の可動域を完全に正常化し、再発を防ぐ。

    ◦ 睡眠の質を高め、朝起きた時に疲れがしっかりと取れている身体を作る。

• セルフケア指導:

    ◦ 呼吸法: 浅くなったと感じた時に、意識的に呼吸を深い状態に戻す習慣をつける。また、口呼吸を避け、基本は鼻で呼吸することを心がける。

    ◦ 温熱療法: 入浴時などに蒸しタオルで鼻を温め、鼻腔周辺の血行を促進する。

    ◦ 口腔マッサージ: 入浴中などリラックスしている時に、口の中から頬の筋肉などをマッサージします。顔や顎の緊張を内側から直接緩和することは、首や肩のこわばりを解き、ひいては呼吸を深くするための重要なアプローチとなります。

    ◦ 身体の意識: 身体が発する「何か嫌だな」という微細なサインは、不調が本格化する前の重要な警告です。この感覚に早期に気づき、対処することは、ご自身で実践できる最も効果的な予防医学の一つです。大きな症状になる前に、小さな歪みを修正する心構えを持ってください。

総括

本症例は、患者様の主訴であった肩腕部の可動域制限という局所的な問題が、実は季節的な要因(乾燥と寒さ)に起因する呼吸機能と全身循環の低下という、より本質的な問題の表出であったことを明確に示しています。

表面的な症状のみを追う対症療法ではなく、身体全体を一つのシステムとして捉え、その根本原因にアプローチする東洋医学的な視点がいかに有効であるかを示す好例と言えるでしょう。今後も、患者様一人ひとりの身体の声に耳を傾け、根本的な改善を目指した施術を続けていく所存です。

川崎市多摩区のアトピー専門整体「英気治療院」