【本記事の性質とご注意】
当サイトでは、確立された医学的知見の解説に加え、臨床現場での生の思考プロセスを重視した「症例報告」を掲載しています。これらはエビデンスの芽となる貴重な記録であり、教科書通りの結果が得られないケースへのアプローチを共有することを目的としています。
※個別の症例に基づく記録であり、全ての患者様に適用されるものではありません。具体的な診断や治療については、必ず医療機関を受診してください。
この記事を読むことで、春の肌荒れや痒みと「体の内側の緊張・疲れ」との関係がわかります。
再来院時の状態
患者様は、左肩の痒みや不調、そして春特有の疲労感を訴え、再来院されました。前回から約1ヶ月が経過し、年度末から年度初めにかけての繁忙期が続き、十分な休息が取れない状況であったとのことです。
春は激しい気温差や気圧の変動、新生活に伴うストレスが重なり、自律神経が過剰に働いてエネルギーを消耗しやすい時期とされています (1)(2)。お忙しい日々が続くなかで、本来ならスムーズに行われるはずの「お体のお掃除(代謝やデトックス)」が少し追いつかなくなっているような印象を受けました。
お体を拝見すると、右側の肋骨周りや背中に強い張り(緊張)が見られ、お体全体の巡りが滞って、内臓が少し窮屈そうにしているようなサインが出ていました。ご自身では左側の痒みが気になっていらっしゃいましたが、実はお体を支える右側のバランスや内臓周りの緊張が、めぐりめぐって左側の不調に関わっていることも多いんですよ。
また、ふくらはぎの張り(特に外側)も確認されました。電気刺激への反応の鈍さ——感覚のセンサーが鈍くなっているような状態——や、常に力が入っているような状態も見受けられ、これは交感神経が優位になり続けている自律神経バランスの乱れを示唆している可能性があります (6)(7)。首が前に出た姿勢も確認され、姿勢の改善も課題として挙げられました。施術中に「右側を触られるのに、なんで左が楽になるんですか?」とおっしゃっていたのが、この症例の面白さを象徴していました。
施術者の仮説
冬の間に静かに溜まったお疲れが、春の激しい変化をきっかけに、お体の調整能力(キャパシティ)を少し超えてしまったことが、今回の不調につながったのかもしれないと推測されます。右側の背中や内臓周りの緊張が全身の巡りを悪化させ、結果として左肩周辺の不調や、ふくらはぎの張り、体温調節の困難さにつながっていると考えられます。
常に力が入っている状態は、自律神経のバランスの乱れを示唆している可能性があります (6)。東洋医学的には、ストレスによる「肝気鬱結(気の滞り)」が体内の内熱を生み、皮膚の炎症や痒みに関与するという視点もあり (4)、この経過に鑑みると「右側の内臓周りに強い張りを感じ、気の流れが滞っている状態と解釈し、ケアを行った」という仮説を立てました。
施術内容と経過
今回の施術では、まず背中を中心に15分間の超音波治療を実施しました。専門の機器を使い、温めながら背中の深い部分の筋肉をじんわりほぐすことで、お体全体の巡りをスムーズに整えるお手伝いをさせていただきました。超音波の1MHz前後の周波数は皮下数センチにまでエネルギーを届け、深層筋の血流改善に寄与するとされています (5)。
次に、内臓周りの筋膜の緊張を和らげる目的で鍼治療を行い、筋肉の緊張をほぐすために電気刺激も併用しました。さらに、右側の背部・腹部周辺の緊張を緩める手技療法を施しました。施術前後の変化を確認するため、仰向けに寝た際の背中の状態をチェックしました。施術後、お肌の調子を整えるベースが整い、穏やかにお過ごしいただける兆しが見えました。
施術を通じての考察
超音波を使って背部深層筋の緊張を和らげることで、自律神経の節前線維への圧迫が軽減され、内臓機能の調整(ホメオスタシスの回復)に寄与する機序は考えられます。ただし、これはあくまで「お体全体の巡りを整えるサポート」であり、内臓そのものへの直接的な治療行為とは異なります (5)。
鍼治療や手技療法による「内臓周りを緩める」アプローチは、迷走神経(副交感神経)を刺激し、抗炎症経路を活性化させることで、アトピー性皮膚炎に関わるサイトカイン(IL-31など、「痒みサイトカイン」とも呼ばれる物質)の過剰放出を抑制する可能性が示唆されています (8)(9)。アトピー性皮膚炎は皮膚バリア障害、免疫異常、微生物バランスの乱れが複雑に絡み合う疾患とされており (7)、「腸・皮膚軸」「肝・皮膚軸」という概念からも、内臓機能と皮膚症状のつながりは研究が進んでいる分野です (9)。
「整体や鍼で肌が変わるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これらは医療機関での治療を否定するものではなく、お体のベースを整える補完的なケアとしての役割を担っています。春特有の疲労感は、体のメンテナンスが追いつかない時期に起こりやすいため、定期的なケアの重要性が改めて示唆されました (1)(2)。
まとめ
春の疲労感や痒み、肌の過敏さにお悩みの方には、体の内側——特に内臓周りの緊張や自律神経のバランス——からのアプローチが有効な場合があります。
今日からできること
① 背伸び+深呼吸(朝1分) 起床後、両腕を上に伸ばしながら大きく息を吸い、ゆっくり吐く。肋骨周りをじんわり動かすことで、副交感神経が優位になり内臓周りの緊張がほぐれやすくなります。
② 右側の肋骨を温める(夜1回) 蒸しタオルや市販の温熱シートを右の肋骨下あたりに当て、5〜10分じっくり温める。内臓周りの巡りをサポートする簡単なセルフケアです。
③ 就寝前ストレッチ(5分) 繁忙期こそ、ふくらはぎの外側を軽くほぐすだけでも蓄積疲労の軽減に役立ちます。
ご自身の体の状態を把握し、適切なセルフケアを日常に取り入れることが、本来の健康を取り戻す第一歩です。気になることがあれば、ぜひ専門家にご相談ください。
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【参考文献・出典】
[1] 鹿児島県国民健康保険団体連合会「春の体調不良と自律神経」(2022年) 引用根拠:春の気温差や気圧変動に対応するために交感神経が活発に働き、エネルギーが消耗され疲労を感じやすくなると明記されている。 URL:https://www.kr-kokuho.or.jp/wp/wp-content/uploads/2022/05/202205.pdf
[2] ひだまりこころクリニック「春バテの原因 — 心と体に何が起こっているの?」(2023年) 引用根拠:新生活のストレスや気圧の揺らぎが自律神経のバランスを崩し、不調を招くメカニズムが解説されている。 URL:https://nagoya-meieki-hidamarikokoro.jp/blog/spring-fatigue/
[3] MSDマニュアル プロフェッショナル版「肝肺症候群」(2024年) 引用根拠:肝疾患における肺血管の拡張(肝肺症候群)は低酸素血症を伴う特異な病態であり、徒手的な「鬱血の解消」の対象ではない。 URL:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/05-%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%82%BA%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7%E7%97%87/%E8%82%9D%E8%82%BA%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
[4] 臨床教育研究会「アトピー性皮膚炎と肝の深い関係」(2021年) 引用根拠:ストレスによる「肝気鬱結」が体内の「内熱」を生み、皮膚の炎症を悪化させるという東洋医学的視点が詳細に述べられている。 URL:https://tocowaca.com/post-10837/
[5] 伊藤超短波株式会社「UST-770 製品紹介」(2024年) 引用根拠:超音波の主な効能は「立体的な加温」と「ミクロマッサージ」であり、内臓そのものの病態改善(鬱血解消)は認められていない。 URL:https://www.medical.itolator.co.jp/product/ust-770/
[6] 厚生労働省「あはき柔整広告ガイドラインの改正ポイント」(2025年2月) 引用根拠:技能、施術方法、経歴に関する広告が制限され、SNSでの「必ず治る」といった不適切な表現への指導が強化されている。 URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001412682.pdf
[7] PMC8139547「Current understanding of Atopic Dermatitis pathogenesis」(2021年) 引用根拠:ADは皮膚バリア障害、免疫異常、微生物ディスバイオーシスの複雑な相互作用によるものであると概説されている。 URL:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8139547/
[8] PMC7027518「Neural pathways that mediate pruritus in AD」(2020年) 引用根拠:皮膚からの痒み信号はC繊維を介して脊髄に伝えられ、脳で知覚されるプロセスが詳述されており、内臓反射との接点が考察されている。 URL:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7027518/
[9] PMC11348537「Pruritus in patients with chronic liver disease」(2023年) 引用根拠:慢性肝疾患患者における痒み(肝性掻痒症)の発生機序と、全身的な代謝の影響が報告されている。 URL:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11348537/
[10] 株式会社サングローブ「鍼灸院の広告規制ガイド」(2025年版) 引用根拠:あはき法における「効果の断定表現」「独自の技術説明」の禁止事項が実例とともに解説されている。 URL:https://www.sungrove.co.jp/acupuncture-clinic-ad-regulation/
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