【本記事の性質とご注意】
当サイトでは、確立された医学的知見の解説に加え、臨床現場での生の思考プロセスを重視した「症例報告」を掲載しています。これらはエビデンスの芽となる貴重な記録であり、教科書通りの結果が得られないケースへのアプローチを共有することを目的としています。
※個別の症例に基づく記録であり、全ての患者様に適用されるものではありません。具体的な診断や治療については、必ず医療機関を受診してください。
※本施術は自由診療です。費用・施術期間・リスク(内出血・倦怠感・好転反応等)については事前にご相談ください。
アトピーの肌が、じわじわと紫色に変わってきた。
体全体がどんどん硬くなっていく気がする。
でも、どこに相談したらいいかわからない——。
そんなもどかしさを感じている方も、多いのではないでしょうか?
今回は、そのような状態でお越しになった30代女性の施術経過を記録します。
現在の状態
慢性的な炎症と皮膚の「紫色」の停滞
今回来院された30代女性の患者様は、長年のアトピー性皮膚炎に悩まれていました。
皮膚の変色と、全身の関節可動域の制限が続いていました。
特に気になったのは、皮膚が「紫色」を呈している点です。
単なる炎症後の色素沈着(メラニン)だけではありません。
微小循環の停滞や「静脈性うっ滞(血液の流れが滞った状態)」が関与している可能性があります。
還元ヘモグロビンの蓄積も見られます。
赤血球の漏出による「ヘモジデリン(真皮に固着した鉄分)」の沈着も示唆されます 。
仰臥位で顕著になる「生理的間隙(隙間)」
身体の状態を確認すると、仰向けに寝た際に大きな隙間が認められました。
首、腰、そして特に「膝裏」です。
膝裏にタオル3枚分もの隙間がある状態は、膝関節が完全に伸展できていない証拠です。
このような「生理的間隙」は、身体が不安定さを感知しているサインです。
姿勢を保持しようとして、不随意な「防御的筋収縮」が生まれます 。
施術者の仮説
スーパーフィシャル・バック・ライン(SBL)の緊張連鎖
膝裏の大きな隙間を確認したとき、全身の緊張がひとつながりになっていると感じました。
足底から頭頂までを繋ぐ筋膜経線、「スーパーフィシャル・バック・ライン(SBL)」。
その張力が全体的に高まっているという印象を受けました 。
膝裏はハムストリングスと腓腹筋が交差する要所です。
ここが「浮いている」と、腰椎の前弯(反り腰)が強まります。
さらに首(後頭下筋群)の硬さを引き起こすという仮説を立てました。
温熱刺激によるHSP誘導と循環改善
週1回の「温熱刺激」を中心に据えることにしました。
ヒートショックプロテイン(HSP70等)を誘導します。
細胞保護と抗炎症作用を促進できると考えました 。
同時に、血管拡張を促すことも狙いとしました。
組織に停滞しているヘモジデリンや老廃物の回収を助け、皮膚色の改善をサポートします。
施術内容と経過
「間隙埋め」による中枢神経への安心感入力
施術では、まず「ポジショニング」を行いました。
膝裏、腰、首の隙間をタオルで適切に埋めます。
これにより、支持面積が広がります。
「身体が支持面に預けられている」という感覚が脳へ届きます。
隙間を埋めると、脊柱起立筋などの放電量が有意に減少します。
筋電図(EMG)を用いた研究でも実証されています 。
1ヶ月後の変化:循環と緊張の変容
週1回の施術を4回継続した結果、皮膚の色に変化が現れました。
「紫色」から「赤黒い」状態へと変わってきたのです。
停滞していた古い血液が回収され始めた兆候です。
酸素を含んだ動脈血の流入が回復しつつあると考えられます 。
膝裏の隙間もタオル3枚から2枚へと減少しました。
全身の余計な筋緊張が少しずつ緩和されていきました。
施術を通じての考察
脳の防御パターンの解除
アトピーの患者様は、慢性的な痒みという不快刺激に曝され続けています。
そのため、脳が常に警戒状態(交感神経優位)にある、という印象を受けています。
全身を硬くする防御パターンが、知らず知らずのうちに形成されてしまいます。
ガイドラインでは物理療法として光線療法が主です 。
しかし僕の臨床では、「タオルの間隙埋め」が有効なケースを多く経験しています。
脳に対して「ここは安全だ」という信号を送ります。
不随意な緊張を解く鍵になると推測しています。
皮膚色と代謝の相関
皮膚が紫色から赤黒く変わったプロセスは、代謝の変化を反映しています。
血管内皮細胞からの一酸化窒素(NO)放出が促進されます。
微小循環の改善による代謝亢進が関与していると考えられます 。
今後は、残存する腕の硬さや、足首の連動性を高めることで、さらなる循環改善を目指します。
まとめ
アトピーに伴う皮膚の変色や身体の硬さ。
これは、体のめぐりが滞り、全身に緊張の連鎖が生まれているという体からのサインかもしれません。
適切な温熱刺激と、身体の隙間を埋めるシンプルなアプローチが、脳と細胞の両面から改善をサポートします。
似たような変化を感じていらっしゃる方がいれば、是非とも試してみてくださいませ。
【参考文献・出典】
公益社団法人日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」
URL: https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/ADGL2024.pdf
参照内容: この記事の「アトピー性皮膚炎の定義と治療の三本柱」の根拠として、2型炎症とバリア機能障害の相互作用に関する知見を準拠した。
きたうらわ皮膚科「うっ滞性皮膚炎とヘモジデリン沈着」
URL: https://kitaurawaderma.com/2020/04/12/stasis-dermatitis/
参照内容: この記事の「皮膚の紫色変色とヘモジデリン」の根拠として、血管外に漏出した赤血球がヘモジデリンとなり真皮に固着する機序を引用した。
Thomas W. Myers「Anatomy Trains: Myofascial Meridians for Manual Therapists and Movement Professionals」
URL: https://www.anatomytrains.com/
参照内容: この記事の「SBLの緊張連鎖」の根拠として、膝窩をステーションとする身体後面の筋膜経線の連動性を引用した。
CiNii Research「仰臥位における身体と支持面の隙間、およびポジショニングが筋活動に与える影響」
URL: https://ci.nii.ac.jp/
参照内容: この記事の「間隙埋めによる筋放電量の減少」の根拠として、支持面積の増大が抗重力筋の緊張を低下させる生理学的知見を準拠した。
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