今回は、直接的なスキンケアや薬ではなかなか改善しない手の湿疹や手荒れの根本原因と、ご自宅でできる全身ケアについて解説していきます。
クリームを塗っても、スキンケアを頑張っても、なかなか治らない手の湿疹やあかぎれ、肌荒れ。そんな長引く手の不調に、もどかしい思いをしていませんか?
もし、色々試しても改善しないのであれば、その本当の原因は、皮膚の表面ではなく、もっと身体の深い部分に隠されているのかもしれません。
この記事では、身体全体を見る視点から、その意外な繋がりと、誰でも今日から始められるセルフケア法をご紹介します。
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治りにくい手の湿疹のサイン
最近は乾燥や冷えによって手のひらに湿疹が出やすい人が多いです。一般的には、スキンケアを行ったり、ひどい場合は薬を使ったりするのが対処法です。しかし、もしそれで治らない場合や症状を繰り返す場合は、別に原因があると考えられます。
湿疹の原因が乾燥だけなのか、それともアレルギーなのかは、薬やスキンケアで落ち着くかどうかで判断できます。アレルギーが問題であれば、乾燥する時期に増えるダニやハウスダストといったアレルゲンとの摂取や接触を考慮する必要があります。
乾燥やアレルギーだけではない!本当の原因は「全身のこわばり」
手の乾燥対策をしても潤いが戻らない、またはアレルギー以外の原因で湿疹が増えてしまう場合、他に問題があると考えられます。
本当の原因の一つとして挙げられるのが、全身のこわばりです。手のひらの赤切れ、湿疹、またはさくれといった症状は、実は手に血が溜まってしまい、内側から炎症が起こることで発生することがあります。内側の硬さや血の巡りの悪さが、乾燥や皮膚がもろくなること、そしてひび割れや赤切れを引き起こすことがあるのです。
悪循環のメカニズム:手荒れが全身に及ぼす影響
内側の硬さや血の巡りの悪さが手荒れを引き起こしますが、この手荒れが慢性化し、手がこわばってグーもパーもできない状態になると、さらなる問題を引き起こします。
手がこわばると、服を引っ張るような形で首や肩まで引っ張られ、首や肩が固まってしまいます。これにより、首の周りの神経が障害を受け、さらに手がこわばるという悪循環に陥ります。手だけの湿疹が、実は首や胸回りの湿疹にも繋がったり、皮膚や様々な組織を介してこわばりが広がったりもするのです。慢性化すると、手の問題が手以外の腕や首にまで広がり、手にかかる負担が手以外からも来てしまうことになります。
セルフケア
慢性的な手荒れを断ち切る!3分でできる全身ケア
この悪循環を断ち切るために、硬さや締め付けを変えるケアが必要です。大体3分程度でできるケアをいくつかご紹介します。
1. 呼吸を深めて血流を改善する
手のひらに硬さがあったり、首に硬さがある人は、まず呼吸を見直しましょう。この時期は血が溜まりやすいので、その状態によっては猫背や手のこわばり、むくみが起きやすいのです。
• 肺の空気をいっぱいに満たして胸が広がるようにすると、手に溜まった血液を吸うことによって肺の方に引っ張ってこられるという効果があります。
• まずはしっかりと息を吸って吐くことを意識します。慣れてきたら、手を当てて吸って、10秒ほど止めた後にゆっくり吐く、という動作を繰り返します。
• これを繰り返すことで、肺の空気と血流が良くなり、深い呼吸をすると手のむくみも消えてきます。
2. ほっぺの筋肉を柔らかくする
呼吸の乱れは、ほっぺたの筋肉(表情筋)と関係がある場合があります。マスクをすることで呼吸が浅くなり姿勢が崩れることがあったように、表情筋が硬くなることがあります。
• 口の中に(ゴム手袋などをはめて)親指と人差し指でマッサージをすることで、ほっぺの血流を良くします。
• このマッサージによって、膨らみやすくなったり、口角が上がりやすくなったりします。
• ほっぺが柔らかくなると、横隔膜の筋肉も柔らかくなるため、先の呼吸のケアと合わせて行うと、より空気が満たされやすくなります。
3. 脇・胸を伸ばして神経の通り道を確保する
手のこわばりは、胸や脇、首といった神経の通り道が悪いことで、神経障害を受けて発生することがあります。
• そのような時は、背伸びをして脇の横を伸ばしたり、胸の状態を広げてあげたりすると手のこわばりが軽減されます。
• バンザイをした時や肘を引いた時、肩をすくめた時などに手のこわばりが変わるようであれば、その動きやストレッチをすることで楽になったりします。
症例報告:手の湿疹と全身の不調を主訴とする患者への徒手療法によるアプローチ
標準的なスキンケアや外用薬による直接的な治療に抵抗性を示す慢性的な手の湿疹は、その根本原因が局所的な皮膚の問題に留まらない場合があります。この症例では、そのような難治性の手の湿疹を、全身的な機能不全が発現した「サイン」として捉え、徒手療法による包括的アプローチを行った一例です。患者は手のひび割れや乾燥といった局所症状に加え、全身にわたるこわばりや不調を訴えていた。本症例では、局所症状の背後にある呼吸機能、血行、筋膜の連続性といった全身的な関連性を探求し、症状の根本改善に至った臨床経過を報告します。
患者情報と主訴
患者は30代女性。主訴は、標準的な外用薬やスキンケアに抵抗性を示す慢性的な手の湿疹(赤切れ、ひび割れ)と、それに伴う乾燥およびこわばりである。
患者は長期間にわたり本症状に悩まされ、様々な治療を試みたものの症状は一進一退を繰り返し、根本的な改善には至っていなかった。患者自身も「何をやっても効きません」という無力感を抱いており、症状の慢性化と難治性がうかがわれた。
手の症状に加え、患者は肩こりや呼吸の浅さ、目の奥の不快感といった全身的な不調も自覚していた。これらの愁訴から、手の症状が全身状態と関連している可能性が示唆されたため、評価は局所所見に留まらず、全身を包括的に把握することから開始した。
初見時所見
施術介入前の身体状態を客観的に評価することは、問題の根本原因を特定し、治療仮説を構築するための論理的根拠となる。また、ここに記す所見は、治療効果を測定するための重要なベースラインとして機能する。初見時において、以下の多岐にわたる身体的所見が確認された。
• 皮膚・局所所見:
◦ 手のひらは全体的に硬く、柔軟性が低下していた。
◦ 炎症による赤みが認められ、皮膚は著しく乾燥していた。
• 姿勢・可動域:
◦ 肩、脇周りに顕著な緊張と硬さが認められた。
◦ 上肢全体の可動域に制限があり、特に腕を振る「バイバイ」のような動作に困難が見られた。
◦ 頸部にも強いこわばりがあり、特に伸展(上を向く)動作が制限されていた。
◦ 背臥位にて背中がベッドに密着せず、胸椎伸展の制限および胸郭後面の柔軟性低下が示唆された。
• 呼吸機能:
◦ 呼吸が浅く、肺の全域を十分に活用できていない状態であった。胸郭の可動性低下が認められ、呼吸補助筋の過緊張が示唆された。
• 循環・体液:
◦ 頬を膨らませる動作に左右差があり、片側の頬に血が溜まっている(うっ血)兆候が見られた。
◦ 乾燥に伴う目の奥の不調を訴えており、頭頸部への血流不全が推察された。
• その他:
◦ 立位・歩行時に膝へ過度な負担がかかっている様子が見られた。
◦ 仙骨周辺に硬さがあり、座位姿勢の不安定さが認められた。
これらの所見はそれぞれが独立した問題ではなく、相互に関連し合った一連の機能不全である可能性が強く示唆された。
原因の分析と施術仮説
対症療法では改善が困難であった本症例に対し、症状の根本原因を全身的な関連性から分析し、それに基づいた施術仮説を立てることが不可欠である。初見時所見から導き出された原因分析と、それに基づく包括的なアプローチの論理的根拠を以下に提示する。
原因分析
手の湿疹が難治性であった背景には、以下の相互に関連する要因が存在すると分析した。
1. 血行不良と局所の炎症: 手に血が溜まる「うっ血」状態が持続することで、内側から炎症反応が誘発されていた。この内因性の炎症が皮膚のバリア機能を低下させ、乾燥、ひび割れ、赤切れを悪化させる主要因であると推察した。外用薬などによる外部からのケアだけでは、この内部環境の問題を解決するには不十分であったと考えられる。
2. 全身の「こわばり」の連鎖と悪循環: 手のこわばりは、筋膜の連続性を介して手首、腕、肩、そして首へと緊張を伝播させる。逆に、頸部の強い緊張は神経機能を妨げ、末梢である手の血行や感覚に悪影響を及ぼす。これにより、「手の不調が首を硬くし、首の硬さがさらに手の不調を悪化させる」という「悪循環」が生じていた。
3. 呼吸機能の低下とその影響: 表情筋、特に頬の筋肉の硬さが、横隔膜の動きと連動して浅い呼吸を引き起こしている可能性を指摘した。横隔膜は呼吸の主動筋であると同時に、体液循環を促す重要なポンプでもある。その機能低下は、全身の血流改善を妨げ、末端である手のうっ血を助長する一因となっていた。
施術仮説
上記の分析に基づき、以下の施術仮説を立案した。
手の湿疹という局所的な問題に対し、対症療法ではなく、①呼吸機能の改善による全身の循環ポンプ機能の正常化、②全身の血行促進による末端のうっ血解消、③連鎖する身体の緊張緩和による悪循環の断ち切り、という3つの柱で包括的にアプローチすることが、根本的な症状改善に有効である。
この仮説は、局所的な皮膚症状を、全身的な機能不全の「サイン」として捉え直すものである。この包括的アプローチにより、従来の対症療法では得られなかった根本的な改善がもたらされる可能性があると考えた。
施術内容と経過
立案した仮説に基づき、全身の関連性を考慮した徒手療法を段階的に実施した。各介入が特定の所見にどう対応し、どのような即時的変化をもたらしたかを記録することは、アプローチの妥当性を検証する上で臨床的に極めて重要である。
1. 背部からのアプローチと呼吸改善
◦ 目的: 胸郭の可動性を高め、肺の拡張を物理的に促すことで、全身の循環ポンプ機能を改善する。
◦ 手技: 単純な筋肉マッサージではなく、背中を介して肺そのものにアプローチする手技を用い、深く完全な呼吸を誘導した。
◦ 経過: 施術後、仰臥位での背中の浮き上がりが減少し、ベッドに密着しやすくなる変化が見られた。これは胸郭後部の柔軟性が改善し、呼吸が深くなったことを示唆する。
2. 体側・腋窩部の緊張緩和
◦ 目的: 肩甲骨や上肢の可動域を直接的に制限している体側および腋窩部の筋膜・筋の緊張を解放する。
◦ 手技: 背伸びや側屈などのストレッチを組み合わせた手技を用い、肋骨間や体側の組織を系統的に伸展させた。
◦ 経過: 施術後、「万歳」動作が著しく楽になり、肩関節の可動性が向上した。
3. 口腔内からのアプローチ(頬のリリース)
◦ 目的: 呼吸の深さと密接に関連する表情筋(特に頬の筋肉)の過緊張を緩和し、間接的に横隔膜の機能を正常化する。
◦ 手技: 衛生手袋を着用し、口内に人差し指と中指を挿入し、外側に置いた親指との間で頬の筋肉を挟み込むようにして直接アプローチした。
◦ 経過: 施術直後、患者から「口の中がすっきりして、潤いが出た」とのコメントがあった。また、この手技の後に、制限されていた頸部の伸展(上を向く動作)が改善した。
4. 頸部・喉の緊張緩和
◦ 目的: 首のこわばり、特に前頸部の緊張を緩和し、頭部への血流を正常化する。
◦ 手技: 喉の下や鎖骨周辺の硬結部位に対し、慎重かつ的確な圧を加え、組織の解放を促した。
◦ 経過: 口腔内アプローチで得られた頸部伸展の可動域が、本手技によりさらに改善した。
5. 下肢・仙骨へのアプローチ
◦ 目的: 全身の土台となる骨盤・下肢のバランスを整え、代償的に生じていた膝への負担を軽減する。
◦ 手技: 仙骨の動きを調整し、膝裏や足指など、下肢の緊張が集中する部位へアプローチした。
◦ 経過: 膝の曲げ伸ばしがスムーズになり、座位での臀部の突っ張り感が軽減した。
一連の施術を通じて、患者は「問題が何であるかが見えてきた」と述べ、自身の身体の連動性と問題の所在について気づきを深めた。これは受動的な治療から能動的な自己管理へと移行する上で重要な意識の変化であった。
結果と考察
一連の施術介入による変化を総括し、その結果が当初立案した施術仮説をどう支持するかを論じることは、本症例報告の核心である。
施術結果の総括
介入による主な変化は、身体的な改善と意識の変化の両側面に認められた。
• 意識の変化: 当初の「何をやっても効かない」という無力感から、「意識して頑張れば改善できる」という自己効力感の向上へと顕著な変化が見られた。自身の身体感覚への気づきと、症状の根本原因への理解が深まったことに起因する。
• 身体的変化: 初見時所見と比較して、以下の具体的な改善が確認された。
◦ 呼吸が深くなり、それに伴い姿勢が改善した(背中がベッドに密着)。
◦ 首・肩の可動域が拡大し、特に頸部伸展や腕の挙上がスムーズになった。
◦ 手のこわばりが軽減し、柔軟性が向上した。
◦ 手のひらの炎症が鎮静化し、客観的にも赤みが薄くなる変化が認められた(患者の「ほら、薄くなった」との発言)。
考察
本症例の結果は、当初の「手の湿疹は全身の機能不全の局所的な現れである」という仮説を強く支持するものであった。本症例は、手の湿疹のような持続的な局所症状は、より深層にある全身的な機能不全を指し示す「サイン」として解釈すべきであるという臨床原則を強く示唆するものである。局所的ではない全身への介入によって皮膚症状が改善した事実は、この視点の有力な証左といえる。
特に、呼吸機能の改善が末端の血行状態に変化をもたらしたこと、そして口腔内や頸部へのアプローチが手の症状改善に繋がったことは、全身的な機能連関の重要性を浮き彫りにした。局所的なケアのみでは改善しなかった症状が、全身のバランスを整えることで快方に向かった事実は、この包括的なアプローチが、慢性症状の「悪循環」を断ち切るために不可欠であったことを強調している。
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