この記事のあらすじ
【3行結論】
・体の中に熱がこもると、耳まで冷えにくくなり寝つきにも影響が出やすくなります。
・冷ます方法には順番と段階があり、状況に応じて選び分ける視点が大切なんです。
・観察と記録を重ねることで、答えはご自身の体の中にあると気づいていけます。
ご来院された女性は、ご自身でも冷却ジェルを冷蔵庫で冷やして耳に当てるなど、工夫を重ねてこられた方でした。それでも耳がなかなか冷たくならない、お風呂上がりに保湿をすると顔が赤くなる、寝つきにくい時間が続く、というお話を伺いました。
原因はひとつではなく、緊張・呼吸の浅さ・脳の使い過ぎが重なって、内側に熱がこもっていらっしゃるように見えました。今回は冷凍したジェルとアイスキャップで深部に向けて冷ましながら、首まわりの詰まりを抜き、デコルテの停滞を動かす流れで施術を進めました。
【読み終わるころに分かること】
・なぜ冷蔵庫で冷やしたものでも耳が冷えないということが起きるのか
・熱がこもっているときに、どの順番で冷ますと体が反応しやすいのか
・お風呂上がりに顔が赤くなる方と、そうでない方では何が違うのか
・毎日の観察を、ご自身の体の取扱説明書に変えていくという考え方
【こんな方に向けて書いています】
寝つきにくく、体の中に熱がこもる感覚がなかなか抜けないと感じている方。冷やしているのに、どこかでこもっている感覚が残ると感じていらっしゃる方に向けて書いています。
現在の状態 ご本人の中で「冷ましてもなかなか冷め切らない」という実感が、来院前から続いていらっしゃいました。まずはその出発点から振り返ります。
冷蔵では耳が冷えないというところから始まりました
最初にお話を伺ったのは、保冷剤を冷蔵庫で冷やしてから耳に当てても、耳が冷たくならないという出来事でした。室内で短時間当てれば、耳は普通に冷たくなるものなんです。耳は血管が少なく、皮膚と軟骨でできていて、もともと冷たさを感じやすい場所だからです (1)。それなのに冷えないということは、よほど熱がこもっているサインだと感じています。
こうしたサインがどこから来ているのか、お話を伺いながら少しずつ見えてきました。
一つじゃないから慢性化していくと感じました
呼吸が浅くなる時間が長いこと、デコルテ周りが固まっていること、頭の使い方が抜けにくいことが重なっていました。一つだけならシンプルに整えられるんです。重なっているからこそ慢性化していく、と感じています。ご本人も「私、首がほてっていない時がない」とお話しくださり、慢性化のラインに乗っていることが伺えました。
次に、こうした重なりをどう見立てたかをお話しします。
施術者の見立て 熱は本来、体の中で出口を持っています。その出口がうまく機能しなくなると、内側にこもっていきます。
熱は目・耳・鼻・口から逃げる仕組みなんです
頭の中に熱が上がってくると、目が乾燥したり、鼻の下が乾いたり、耳が触ると熱を持っていたりするんです。これは穴の開いた場所から内側の熱を逃がそうとする働きで (2)、バックドラフト現象に近いイメージだと感じています。家事で密閉された部屋に酸素が入ると爆発するように、内側の熱は外に出る場所を探しているんです。
その出口を確保しても抜け切らない場合、別の要素が背景に重なっていると考えています。
緊張と呼吸の浅さで、熱が回らなくなります
緊張が強い方や脳を使い過ぎている方は、内側の熱が上がりやすくなる、と感じています (3)。さらに呼吸が浅いと、熱を逃がす力そのものが弱くなります。冷えがあるのも事実なんですが、冷えるのは血管が締まっていることで起きやすくて (4)、緊張と裏表になっているんじゃないかな、と思うことが多いんです。
もう一つ、表面の赤みも見落とせないサインでした。
お風呂上がりの赤みは血流反応のサインです
お風呂上がりに保湿をすると赤くなる、というお話を伺いました。これは炎症ではなく、血流が表面に集まる反応です (5)。水分を肌に与えるだけで赤くなるのは、もともとお風呂で表面に熱が来ていて、そこに水分が触れて反応している、と感じています。冷ましきってから保湿をすると、また見え方が変わってくるんです。
この見立てをもとに、実際の施術の流れをお話しします。
施術内容と経過 冷ます方法には複数あり、その日の熱のこもり方によって順番を変えていく必要があります。
冷凍で短時間、徹底的に冷ましました
ご自宅で冷蔵では冷め切らないという状態でしたので、施術では冷凍したジェルを首の付け根に当てて、上からアイスキャップを頭にかぶせました。短時間で深部に届くようにという狙いです。施術中、ご本人が「いつもなら冷たすぎると感じる温度なのに、今は冷たいと思わない」とお話しくださいました。それくらい熱がこもっていらっしゃったということだと感じています。
冷ますだけでなく、首まわりの詰まりにもアプローチが必要でした。
首の詰まりに、刺絡で抜け道を作りました
首が固まると、頭からの熱の逃げ道が一気に細くなってしまうんです。今回は初めての方でしたので、1か所2か所だけ刺絡で表面に張り付いた血の固着を抜きました (6)。刺絡が初めての方には超音波で散らす方法もありますので、状況に応じて選んでいきます。
合わせて、デコルテ周辺の停滞も整える必要がありました。
カッピングで熱の溜まりを動かしました
カッピングは、皮膚の上に置くことで停滞した血流を動かす働きが期待できます (7)。チクチクする感覚はありますが、熱で寝つけない方には、まず停滞を抜くことが優先になります。施術後、ご本人から「首の感覚が変わった」という言葉をいただき、優秀ですね、とお伝えしました。
施術全体を通じて見えてきたことを、次の章で整理します。
施術を通じての考察 今回の症例で見えてきたのは、「冷ますという行為にも、順番と段階がある」ということでした。
シャワーだけでは表面しか冷えないんです
シャワーだけで済ませると、表面は冷たくなりますが、中の熱が取れていないことが結構あります (8)。一瞬冷たく感じても、しばらくするとまたほてってくるのが目安です。表面と深部を分けて考える必要があるんじゃないかな、と感じています。
もっと冷めない時の選択肢も整理しておきます。
本気で冷ますなら、水風呂と気化熱の組み合わせです
熱中症の現場で一番効くのは水風呂です (9)。次に有効なのが、濡れタオルを全身に当ててうちわで扇ぐ気化熱方式 (10)。ご家庭でも、水風呂は溜めようと思えば溜められますし、家庭の水道水の温度では、銭湯の水風呂ほど冷たくはないので、思っているほど怖いものではない、と感じています。
もう一つ、深部体温に届く入口があります。
手のひらと首から下が、深部体温の入口です
手のひらの毛細血管を冷ますと深部体温が下がるというデータがあります (11)。意識がもうろうとするレベルの熱中症では、首から下を水に浸けます。顔は浸けません (12)。これは「どこを冷やせば中まで届くか」を体が教えてくれている話だと感じています。
これらを踏まえて、最後にお伝えしたいことをまとめます。
まとめ
今回の症例で改めて感じたのは、観察と記録が答えを持っているということでした。
何分で耳が冷えるか、お風呂上がりにどこが赤くなるか、その赤みが時間でどう変わるか。同じ症状でも、人によって冷ます順番は違ってきます。ですので、答えはご本人の体の中にあって、観察することでしか取り出せない、と感じています。
是非ともお伝えしたいのは、寝つけない時の優先順位は、まず冷ますことだ、ということです。冷ましきってから、改めて体の状態を見るのが、安全な順番だと感じています。冷ますことを怖がってしまうと、こもった熱がさらに重なっていきやすくなるんです。
体の中の熱は、表面だけでは見えにくいサインを出してくれます。耳の温度、お風呂上がりの顔色、寝る前の呼吸の浅さ。一つひとつのサインを毎日見てあげることで、答えは少しずつ言葉になっていく、と感じています。
ページ監修者:阿部英雄
英気治療院代表
【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
・統合医療認定師
【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例
【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察
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