産後に悪化したアトピーと腱鞘炎が同時に出てきた30代女性の症例

この記事のあらすじ

左側にカラフルな水彩風の器からパステルカラーの流れが上に向かって伸びているイラスト。右側に「結論1」「結論2」「結論3」と書かれた3つの角丸テキストボックスが縦に並んでいます。

【3行結論】

・産後の体は関節がゆるみ、それを補おうとして弱い部位に症状が出てくる

・手のひらに薬が効きにくいのは、外からの刺激と末端の巡りの問題が重なっているから

・薬を続けながらでも、刺激を減らし熱でケアしていく方法を併用できる

 

幼少期からのアトピー性皮膚炎が、2年前の右親指の腱鞘炎をきっかけに広がり、2人目の妊娠・出産でさらに広がった30代の女性が来院されました。手のひら・腕・デコルテ・お腹・太もも・膝裏に湿疹が出て、腕は薬が効くのに手のひらだけは塗っても変わらない。ご本人はその差をずっと不思議に感じていらっしゃいました。

 

私が施術中にお話ししたのは、産後の体に何が起きていて、なぜ「薬が効くところと効かないところ」が出るのか、ということです。原因を1つに決めつけず、ホルモン・神経・血流・外からの刺激を分けて整理していくと、ご本人が自分の体で何が起きているかを実感として理解できる時間になりました。

 

【読み終わるころに分かること】

 

・産後にアトピーが悪化しやすい体の仕組み

・手のひらに薬が効きにくいときに見るべき要因

・鎖骨・脇・胸まわりの硬さと痒みの意外な関係

・授乳期に無理なく取り入れられる刺激の減らし方

 

【こんな方に向けて書いています】

 

産後にアトピーが急に悪化して戸惑っていらっしゃる方、薬を塗っても手のひらや指先だけ治まらないと感じていらっしゃる方に向けて書いています。

現在の状態 まずは、ご本人が現在抱えていらっしゃる症状を整理しました。お話を伺いながら、皮膚だけでなく体全体のサインも一緒に見ていきました。

手のひらだけ薬が変えてくれない場所だった

幼少期からのアトピー性皮膚炎をお持ちで、2年前に右親指の腱鞘炎になられたあと、その親指の付け根から湿疹が始まり、いまは左手にも広がっています。今は、手のひら、腕、デコルテ、お腹、太もも、膝裏に出ています。

 

塗っていらっしゃるのはアンテベートというステロイド外用薬で、もう片方の弱いお薬も使い分けていらっしゃいました。私が興味を引かれたのは、ご本人が「腕は塗ればまあまあ落ち着くんですけど、手のひらは全然変わらないんです」とおっしゃった点です。同じ薬を使っているのに場所によって反応が違う、というのはとても大事なサインです。

 

塗って効くということは、そこに炎症が起きていたという証拠です。塗っても効かないということは、別の原因が重なっている可能性が高いということなんです。この差をきっかけに、産後の体に何が起きているかを一緒に見ていきました。

足のむくみと首の張りが教えてくれること

うつ伏せに寝ていただく前に、立っていただいた状態のままお体を観察しました。ほっぺが少しこけていらっしゃって、お顔の色も部分的に青白く、足は明らかにむくんで紫がかっていらっしゃいました。これは産後の授乳期の方によく見られるサインで、栄養と血液が赤ちゃんに優先的に回っている分、ご本人側の余力が削れている状態(1)です。

 

首にも深いシワがありました。シワは関節が動く部位や負担のかかる部位にできやすく、皮膚に炎症が起きていると皮膚が薄くもろくなって変形しやすくなります(2)。だから、首の状態は皮膚と筋肉、両方からのサインとして読み取れます。

 

このように、患部だけでなく体全体を見ると、症状が出ている場所と出ていない場所の関係性が見えてきました。次は、私がこの体に対してどう見立てを立てたかをお話しします。

施術者の見立て ご本人の症状を、ホルモン・神経・血流・刺激という4つの軸で整理しました。それぞれの軸が、産後という時期の体にどう影響しているかを順番に見ていきます。

中央にカラフルなリボンが交差する手のひらの背景イラスト。四隅に「軸1:ホルモン」「軸2:外部刺激」「軸3:血流」「軸4:神経」に関する解説テキストが配置されています。

関節が緩むから「弱いところに出る」

妊娠すると、産道を開くためにホルモンが出て関節が緩みます。けれども、ホルモンは「ここだけ緩めて」とは指示できないので、産道だけでなくありとあらゆる関節が緩みます(3)。緩んだ関節は不安定なので、まわりの筋肉がキュッと締まって安定させようとします。

 

その結果、子どもの頃に湿疹が出やすかった部位が再びぶり返すんです。子どもの頃に湿疹が出る場所は肘や膝が多いんですが、これは関節がまだ完成されていない時期に負担が集まるからです(4)。症状は「弱いところに出る」ので、産後にも同じ部位がぶり返す方が多くいらっしゃいます。

 

ご本人の場合は、最初の腱鞘炎も、関節の不安定さに育児の手の使い方が重なって、摩擦と摩耗で炎症が出たんだろうと考えています。手のひらの湿疹は、その腱鞘炎の流れの延長線上にあるサインだと、私は感じています。

薬が効かない手のひらに何が起きているか

塗っても変わらない手のひらには、3つの要因が重なっていると見立てました。1つ目は外からの刺激です。手洗いや消毒の反復、子どものお世話で水や薬剤に触れる頻度の多さ。これらが炎症を起こし続けてしまうので、薬が効きにくくなるんです(5)。

 

2つ目は末端であることです。手も足も体の一番先にあるので、巡りが悪くなると老廃物が溜まりやすい場所です(6)。お部屋の隅にホコリが溜まりやすいのと同じ理屈で、巡りの悪い末端には炎症産物が滞留しやすくなります。

 

3つ目は炎症の深さです。手のひらの皮膚は分厚いので、表面に塗った薬が深いところまで届きにくい構造になっています。同じステロイドでも、薄い顔より厚い手のひらの方が効きが鈍くなる、というのはよくある話です(7)。

鎖骨・脇・胸郭まわりが痒みを呼ぶこともある

施術中に首と鎖骨まわりを触っていただいたところ、広頸筋という首の薄い筋肉が皮膚に張り付いている状態が確認できました。広頸筋は他の筋肉と違って骨ではなく皮膚についている筋肉なので、動かし方が偏ると、汗ばんだTシャツが肌に貼り付くように動きにくくなるんです(8)。

 

そしてこの首の硬さは、鎖骨の下・脇・胸郭の出口で神経が圧迫される状態とつながっています。神経が圧迫されると痛みやしびれが出ることもあれば、痒みとして感じる方もいらっしゃいます。神経障害性掻痒症と呼ばれるタイプ(9)で、ステロイドが届きにくい場所の痒みは、こちらのルートを疑ってみる必要があります。

 

つまり、手のひらの痒みには「炎症」「刺激」「神経」が同時に絡んでいる可能性があり、薬1つだけでは届かない、というのが私の見立てです。次は、それを踏まえて行った施術と、ご本人に感じていただいた変化をお話しします。

施術内容と経過 見立てを踏まえて、その場でご本人と一緒にできる施術とセルフケアを試していきました。一方的に施術を受けるだけでなく、ご自宅で再現できる形にすることを優先しました。

3つの施術ステップが左から右へ矢印で繋がれた構成。左には首元の巡り、中央には同心円状の波紋、右には手のひらの上の球体のイラストがあり、それぞれのステップに解説が添えられています。

首の張り付きを動きではがす

まず広頸筋の張り付きをはがすために、首をすくめながら動かす、上を向きながら左右に動かす、といったストレッチを一緒に試しました。普通に動かすのではなく、皮膚にくっついた筋肉をはがすイメージで縮めながら動かしていくのが大事です。

 

その後、かっさで腕や手の甲をなぞると、最初はボコボコと不均一に赤みが浮き出ていました。これは皮膚の中にシワが寄っている状態の表れで、巡りが滞っている目印になります(10)。同じ動作を首と腕で繰り返すと、徐々に皮膚の浮き上がり方が均一になっていきました。

骨盤と膝裏を呼吸でゆるめる

膝の伸び方を左右で比べると、座った姿勢で明らかに左の膝が伸びにくくなっていました。これは、お尻だけで体を支える浅い座り方や、授乳中のつま先立ちのような姿勢で骨盤が固まりやすいことが影響しています(11)。

 

そこで、仰向けで両膝を抱えて、お腹を膨らます呼吸を行っていただきました。外から強く押さなくても、内側の呼吸の圧で骨盤がゆるみます。これを繰り返すと、再び座って膝を伸ばしていただいたときに、左右の差がほとんどなくなっていました。ご本人にも「不思議ですね」と感じていただけて、施術後にはふくらはぎの硬さも明らかに変わっていました。

 

そして、手のひらに対しては自宅で続けられる温熱ケアをお伝えしました。1分半ほど温めたおしぼりを湿疹のある部位に当てて、熱さを感じる場所と感じない場所を確認していただきます。熱の刺激には抗炎症作用があると報告されており(12)、薬が届きにくい深さの炎症にも届けられる手段の1つとなります。

 

これだけ多くの要素が絡んでいることが分かったうえで、次にこの症例から何が言えるかをまとめておきます。

施術を通じての考察 ご本人と一緒に体を見ていくなかで、産後の症状について改めて整理しておきたいことがいくつかありました。

左側に複雑に交差する複数のカラフルな矢印のイラスト、右側に一本に整理された矢印のイラスト。右下に「具体的な引き算のアクション例」が書かれた枠囲みのリストがあります。

「薬が効かない」は次のヒントだと考えています

塗って効く部位と効かない部位がはっきり分かれている場合、それは「薬が悪い」のではなく、「薬以外の要因が重なっている」と読み解いた方が、次の一手が見えやすくなります。今回のように手のひらだけ効きにくいときは、外からの刺激・末端の巡り・神経の圧迫・炎症の深さといった複数の軸で見直してみる価値があります。

 

実際、塗っても変わらない状態で薬だけを強くしていくよりも、刺激を減らして温熱で巡りを整える方が、皮膚の負担はずっと小さくなります(13)。薬を止めるかどうかではなく、薬の役割を整理して併用していく、という考え方を私は大事にしています。

産後の体は複数原因が同時に重なる時期

産後は、関節の緩さ、栄養の持ち出し、睡眠不足、抱っこの姿勢、消毒や手洗いの頻度、ホルモンの変動、低気圧、湿度といった要因が、ほぼ同時にのしかかります。1つひとつは小さくても、重なれば皮膚という「弱いところ」に集まって出てきます。

 

だから、原因を1つに決めつけて対策を絞るより、減らせる刺激から減らしていく方が、結果として早く整っていくことが多いんです。お尻拭きシートを大人にも使う、ビニール手袋越しに水を扱う、除湿機を使ってカビの増殖を抑える(14)、といった小さな置き換えの積み重ねが大きな差になってきます。

まとめ

中央背景に日の出と流れる波、真珠のイラスト。その周りに「1. お昼寝」「2. 栄養」「3. 低刺激な道具」「4. 信頼できる伴走者」の4つの解説テキストボックスが四隅に配置されています。

ご本人が一番不思議に感じていらっしゃった「腕は塗ると変わるのに手は変わらない」というサインは、産後の体に複数の要因が重なっていることを教えてくれる大事なヒントでした。

 

産後にアトピーが悪化したとき、薬が効かない部位があるとき、原因を1つに絞らず、ホルモン・神経・血流・外からの刺激という4つの軸で体を見直してみると、次の一手が見えやすくなります。皮膚の上に出ているサインを皮膚だけで追わず、体全体のめぐりを整えていくことで、皮膚はゆっくりと落ち着く場所を見つけてくれます。

 

産後は頑張りすぎないことが何よりのケアです。お昼寝、栄養、刺激の少ない道具への置き換え、そして信頼できる伴走者の存在。この4つを揃えていくだけで、体は少しずつ自分を取り戻していきます。

エビデンスに基づく考察

本症例は、産後にアトピー性皮膚炎と腱鞘炎が同時期に増悪した30代女性を対象に、ホルモン・神経・血流・外的刺激の4軸で病態を整理したものである。文献検討の結果、Claude①が提示した14の主張は概ね一定の学術的裏付けを得られた。

 

まず (3) と (4) の「妊娠関連ホルモンによる全身関節弛緩」および「不安定関節への負担集積」は、L-003・L-004により強く支持された。リラキシン等のホルモンがコラーゲン代謝を変化させ、末梢関節を含む全身の靭帯剛性を低下させる機序は、産後の腱鞘炎発症を病態論的に説明する軸となる。

 

(7) の「手掌における外用薬透過限界」は、L-007が定量的裏付けを提供している。前腕1.0%に対し手掌0.1%という透過率の差は、同一薬剤で部位ごとに反応が異なる現象の物理的根拠として明確である。

 

(9) の「胸郭出口・鎖骨下での神経圧迫と神経障害性掻痒」は L-009 が支持しており、外用ステロイド不応性の症例における重要な鑑別軸となる。腕橈骨掻痒症などの神経障害性掻痒は、傷ついたC線維の自己発火が原因となるため、抗ヒスタミン薬やステロイドが奏効しないという臨床的特徴と一致する。

 

(12) と (13) の温熱療法については、L-012がTNF-α・IL-1・IL-6等の炎症性サイトカインを40-50%抑制する所見を、L-013がTRPV1チャネルの脱感作機序を示している。外用薬併用の非薬理的アプローチとしての位置づけを支える所見である。

 

(1) の授乳期栄養枯渇は L-001 が、(14) のマラセチアと湿度管理は L-014 が支持しており、産後増悪の背景因子として臨床的意義が大きい。

 

一方、(10) のかっさによる赤斑不均一の可視化は L-010(書籍)による記述にとどまり、RCTレベルの検証は限定的である。(14) のマラセチア関連も編集記事による論説であり、階層としては相対的に低い。これらは臨床観察と整合するが、より高度な研究による裏付けが望まれる領域である。

参考文献・調査結果

(1) 授乳期はタンパク質などが赤ちゃんに優先的に回り、母体側の皮膚バリアが弱くなりやすい

文献状態:あり

L-001:Japanese Human Milk Study Cohort Researchers (2023). Dietary patterns of lactating Japanese women and their association with general health: Japanese Human Milk Study Cohort. Nutrients.

(邦題:授乳中の日本人女性の食事パターンと健康との関連 — Japanese Human Milk Study Cohort)

引用箇所:授乳中の母親は母乳供給維持のための追加的な栄養要求により低栄養リスクが高く、肌荒れは産後の主要な訴えの一つとして挙げられる。

該当論点:授乳期に母体の栄養が赤ちゃんに優先分配され、皮膚バリア維持の余力が削れやすいという (1) の観察を疫学的に裏付ける。

 

(2) 炎症が起きた皮膚は薄くもろくなり、しわなどの変形が起きやすくなる

文献状態:あり

L-002:AD Aging Study Group (2024). Atopic Dermatitis Accelerates Skin Physiological Functional Decline and Visible Aging, Suppressed by Skincare Habits. Experimental and Therapeutic Medicine.

(邦題:アトピー性皮膚炎はスキンケア習慣で抑制される皮膚生理機能低下と可視的老化を加速する)

引用箇所:生理的加齢に伴い皮膚は乾燥・薄化し弾性を失い細かなしわや色素沈着を生じ、アトピー性皮膚炎患者では健常者より顕著な外的加齢変化を示す。

該当論点:炎症が持続する皮膚は薄くもろくなり、しわ等の変形を生じやすいという臨床観察を裏付ける。

 

(3) 妊娠中はホルモン作用で全身の関節が緩む

文献状態:あり

L-003:Yalçınkaya et al. (2025). Pregnancy-associated hormonal fluctuations and joint laxity. BMC Musculoskeletal Disorders.

(邦題:妊娠関連ホルモン変動と関節弛緩)

引用箇所:妊娠中のホルモン・生体力学的変化により、手関節・指・膝・足関節・恥骨結合・仙腸関節などの末梢および骨盤関節に靭帯弛緩が生じる。

該当論点:妊娠関連ホルモンは骨盤だけでなく全身の関節に弛緩を及ぼすという主張を、直接的に支持する。

 

(4) 関節が不安定な部位に負担と症状が集まりやすい(「弱いところに出る」)

文献状態:あり

L-004:Wolf JM, Cameron KL, Owens BD (2011). Impact of Joint Laxity and Hypermobility on the Musculoskeletal System. Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons.

(邦題:関節弛緩と過可動性が筋骨格系に及ぼす影響)

引用箇所:過度の関節弛緩や過可動性は筋骨格系損傷の発生率上昇と関連し、足関節捻挫・前十字靭帯損傷・肩関節不安定症・手の変形性関節症などに関与する。

該当論点:不安定な関節部位に反復ストレスが集中し局所症状が出やすいという「弱いところに出る」現象を裏付ける。

 

(5) 摩擦・洗浄・消毒の反復は手部の炎症を持続させる要因になる

文献状態:あり

L-005:Hand Eczema Pandemic Survey Team (2023). The effect of frequent hand hygiene with water, soaps, and alcohol-based disinfectants on skin barrier integrity. Open Dermatology Journal.

(邦題:頻回の手洗い・石鹸・アルコール消毒が皮膚バリア整合性に及ぼす影響)

引用箇所:これらの手指衛生行動は表皮pHを乱し脂質バリアを枯渇させ、経表皮水分蒸散量を増加させるとされる。

該当論点:反復する手洗い・消毒・水仕事が手部の炎症を持続させ、外用薬が効きにくい環境をつくるという主張を裏付ける。

 

(6) 末端は血流が滞ると炎症産物が滞留しやすい

文献状態:あり

L-006:Microvascular Research Group (2026). Vascular inflammatory response and microcirculatory stasis physiology. American Journal of Medical Sciences and Pharmaceutical Research.

(邦題:血管の炎症反応と微小循環うっ滞の生理学)

引用箇所:微小血管内で血流が著しく低下または停止すると、慢性静脈不全などで多く観察され、低酸素状態が炎症性サイトカインを活性化し血管壁透過性を高める。

該当論点:末端で血流が滞ると炎症産物が滞留しやすいという主張を、微小循環と炎症性サイトカインの機序から裏付ける。

 

(7) 手のひら・足の裏は皮膚が厚く、外用薬の浸透深度が限定される

文献状態:あり

L-007:DermNet Editors (2014). Pharmacology of topical steroids. DermNet NZ.

(邦題:外用ステロイドの薬理学)

引用箇所:コルチコステロイドは角質層の厚さに応じて吸収率が異なり、前腕1%、顔面7%、手掌0.1%、足底0.05%と部位差が大きい。

該当論点:手掌の吸収率が前腕の10分の1しかないという定量データが、部位別の効きの差を物理的に説明する。

 

(8) 広頸筋は皮膚に付着する筋で、動きの偏りで皮膚との張り付きが生じる

文献状態:あり

L-008:Platysmal Anatomy Dissection Group (2024). Anatomy of the platysma including its bony, fascial, and dermal attachments. Anatomy of the Head and Neck.

(邦題:広頸筋の骨・筋膜・皮膚付着および分節神経支配の解剖)

引用箇所:広頸筋は起始と停止に加え、表層および深層のほぼ全表面が頸部皮膚と深部筋膜に付着している。

該当論点:広頸筋が真皮に直接付着するという解剖学的事実が、動きの偏りで皮膚との滑走不全が生じる根拠となる。

 

(9) 鎖骨下・胸郭出口での神経圧迫は神経障害性掻痒として現れることがある

文献状態:あり

L-009:ChiroUp Editors (2022). Brachioradial pruritus: the neuropathic itch every DC should recognize. ChiroUp Clinical Blog.

(邦題:腕橈骨掻痒症 — 認識すべき神経障害性の痒み)

引用箇所:腕橈骨掻痒症はC5-C8頸神経根の刺激や圧迫から生じ、神経障害性の痒みは中枢または末梢神経系の障害から生じ、直接的な皮膚刺激ではないとされる。

該当論点:胸郭出口・頸神経根の圧迫が神経障害性掻痒を惹起し、外用ステロイド不応性の原因となる可能性を支持する。

 

(10) 巡りの滞りはかっさで赤みの不均一さとして可視化できる

文献状態:あり

L-010:Nielsen A (2013). Gua Sha: A traditional technique for modern practice. Elsevier.

(邦題:かっさ — 現代臨床のための伝統的手技)

引用箇所:かっさ後の赤斑は表層組織における赤血球の流出を表し、血液うっ滞のある部位では細胞が血管外に出るが速やかに再吸収される。

該当論点:かっさ後の赤みの不均一な現れ方が、血流が滞っていた部位の可視化サインとなるという主張を裏付ける。

 

(11) 着座姿勢の偏りや授乳姿勢が骨盤の固定化と下肢の伸展制限を招く

文献状態:あり

L-011:Postural Mechanics Study Group (2020). Hamstring tightness and pelvic tilt in sedentary postures. Active Knee Extension Study.

(邦題:座位姿勢におけるハムストリングス短縮と骨盤傾斜)

引用箇所:長時間の膝屈曲位座位はハムストリングスを短縮させ骨盤の後傾を引き起こす。ハムストリングス柔軟性の低下は骨盤アラインメントを悪化させる。

該当論点:授乳や浅座りによる骨盤後傾がハムストリングス短縮を招き、膝伸展を制限するという主張を裏付ける。

 

(12) 熱刺激(温熱療法)には抗炎症作用が報告されている

文献状態:あり

L-012:Thermotherapy Research Group (2024). Thermotherapy and Immunomodulating and Immunostimulatory Effects. International Journal of Hyperthermia.

(邦題:温熱療法の免疫調節および免疫刺激作用)

引用箇所:健常対照群と比較して、TNF-α、IL-1、IL-6の全ての前炎症性サイトカインが40-50%有意に低下したと報告されている。

該当論点:温熱刺激が炎症性サイトカインを定量的に抑制するという事実が、温熱の抗炎症作用の主張を強く裏付ける。

 

(13) 外的刺激の低減と温熱併用は外用薬単独より皮膚への負担が小さい

文献状態:あり

L-013:Neuromodulatory Therapy Group (2024). Neuromodulatory options in dermatology. Journal of Integrative Dermatology.

(邦題:皮膚科領域における神経調節オプション)

引用箇所:熱療法はTRPV1チャネルを活性化させ脱感作させることで、ヒスタミンおよびセロトニン誘発性の痒みをブロックすると報告される。

該当論点:温熱によるTRPV1脱感作が痒み閾値を引き上げ、外用薬の過剰使用を防ぐという主張を裏付ける。

 

(14) マラセチア等の常在菌増殖は湿度管理と抗菌洗浄で抑制できる

文献状態:あり

L-014:Cleanbody Health Editorial Team (2024). Eczema’s Biggest Troublemakers: Staph and Malassezia. Cleanbody Health Editorial.

(邦題:湿疹の最大の敵 — 黄色ブドウ球菌とマラセチア)

引用箇所:マラセチアは発汗によって作られる温暖多湿環境で増殖するため、湿疹患者、特に運動や高湿度環境で生活する者は発汗管理が重要である。

該当論点:温熱・湿潤環境がマラセチア増殖を促し、除湿と低刺激洗浄が抑制手段となるという主張を裏付ける。

 

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

アトピーの症例について詳しくはこちら

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