指が開かない場所にかゆみが残る、アトピー症例で巡りを整える経過

この記事のあらすじ

淡い水彩パステル背景のスライド。左側に「全体的な鎮静化:全身のかゆみは10段階中「7」から「3」まで軽減」、「局所への集中」、「方針の転換」と書かれた3つのカプセル型テキストボックスがある。右側には、小さなドットの集合で描かれた「7」という数字から、カラフルな流線状のドットの帯が伸び、同じくドットで描かれた「3」という数字に繋がるイラストがある。

【3行結論】

・全身のかゆみは10段階で7から3まで落ちてきていますが、指の間とほっぺに部分的に残っています

・指が開ききらない場所やほっぺの動きが硬い場所には血が滞りやすく、そこにかゆみが集まってきます

・炎症が続いている間は化粧を控え、皮膚に何かを乗せるより先に体の巡りを整えることを優先しています

 

今回は、40代・女性の患者さん(以下、佐藤さんとお呼びします)の2回目の来院時の記録です。前回から1週間で、全身のかゆみは10段階中7から3まで落ちてきました。それでも指の間と、ほっぺにはまだ症状が残っています。「なぜここだけ残っているのか」を、指の開き方・ほっぺの動き・首肩の硬さから一緒に確認していった1コマです。

 

【読み終わるころに分かること】

・かゆみが出やすい場所と、体の動きの制限がどのように関係しているか

・炎症がまだ続いているサインを、ほっぺの温感覚から見分ける視点

・アトピーの時期に化粧をすることが、なぜ肌の落ち着きを妨げるのか

・自分の体の変化を「わかりやすい動き」で自分自身で測る方法

 

【こんな方に向けて書いています】

長年のアトピー性皮膚炎で対処法に迷い、皮膚だけを見るのではなく、体全体のめぐりから整えていきたい、と感じていらっしゃる方に向けて書いています。

現在の状態 2回目の来院時、佐藤さんに前回からの1週間の変化を伺いました。全体としては軽くなってきていますが、残っている部分にこそ体の状態を読み解くヒントが集まっていました。

淡いパステル調の背景。右側に淡いピンク色の手のひらのイラストがあり、指の間の水かき部分4箇所に黄色いドットが密集して描かれ、手の輪郭を囲むようにカラフルな波線が描かれている。左側には「動かした時、開こうとした時にかゆみのサインが出ている」という吹き出しと、残存する症状(指の間、ほっぺのカサカサ)などを整理したテキストボックスがある。

かゆみは7から3まで落ちてきた

前回、佐藤さんが感じていた全身のかゆみは10段階で7ぐらい。今回、同じ尺度で伺うと3ぐらいまで落ちてきていました。腕の内側や二の腕のポツポツは、まだ触ると分かる場所として残っていますが、以前と比べて回数として減ってきているとのことです。

 

数字で追っていくと、なんとなくの感覚ではなく「どこがどう楽になっているか」がはっきりします。数字が下がってきていること自体が、体がそう反応しているというサインなんです。

 

「じゃあ、今残って気になっている場所はどこですか」と伺うと、佐藤さんが挙げたのは指の間でした。その残っている場所に絞って、もう少し丁寧に伺っていくことにしました。

指の間とほっぺに残るサイン

指の間、それも1本1本の水かきのようなところにかゆみが残っている。もうひとつ、ほっぺもカサカサしているとのことでした。

 

伺っていく中で、佐藤さんが「かゆい時は、手が行ってしまう時なんですよね」とおっしゃっていました。動かした時、開こうとした時にかゆみのサインが出ている。ここが、後の見立ての入り口になっていきます。

 

こうした皮膚に出ているサインと並行して、体の構造的な部分にも気になるところが見えてきました

施術者の見立て 指の間のかゆみと、ほっぺのカサカサ。それぞれについて「どうしてそこにサインが出るのか」を、動きと温感覚の両方から見ていきました。

観察部位、動き・感覚のサイン、施術者の見立てを3列に整理した表。観察部位として「指の間(青丸)」、「ほっぺ(赤丸)」、「日常ケア(緑丸)」が縦に並び、それぞれに対応する動きの特徴や感覚の鈍さ、洗顔による肌ストレスと、施術者による「物理的に温めにくい場所での血の滞り」や「潜在的な炎症」の見立てが詳細に書かれている。

指が開かない場所にかゆみが出る

佐藤さんに両手でグーパーをしてもらったところ、パーを作った時にどうも指が十分に開いていない。特にある1本の指が、他と比べて開きが浅い状態でした。伸ばして開こうとしても、途中で止まってしまう。「動きづらい」を、伸ばしたところで感じていらっしゃる。

 

私は、開ききっていない場所に血が滞りやすく、そこにかゆみが出やすい、と感じています(1)。指の水かきの部分は、ホットパックのような温める道具を当てても物理的に届きにくい場所です。届きにくい場所ほど、巡りが停滞したままになりやすい、と読んでいます。

 

グーパーを繰り返してみて「ここが開いていない」とご自身で自覚できるようになると、どこを緩めるべきかが見えてきます。まずは開き具合の左右差を、ご自身で確認していただくのが最初の一歩になります。

 

指の開き方と並行して、ほっぺの状態にも別のサインが見えていました。

熱く感じないほっぺは炎症のサイン

ほっぺのケアとして、佐藤さんは温かいタオルを当ててくださっているとのことでした。ただ、伺っていくと「暖かい」ぐらいで気持ちいい、と感じているとのことです。

 

私の見立てでは、ほっぺに温かい刺激を当てた時に「熱い」と感じない場所は、まだ炎症が起きている可能性が高い、と考えています(2)。本来、顔は皮膚が薄く、感覚も鋭い場所です。それが「暖かい程度」でとどまっているというのは、その下で炎症の反応が続いているサインとして捉えています。

 

炎症は通常、3日でピークを迎えて、1週間、長くても2週間もあれば落ち着いてきます。それが続いているということは、まだ落ち着ききっていないタイミングだ、と読んでいます。

 

炎症の背景を考えていく中で、皮膚の外側からのアプローチについても伺うことになりました。

化粧という異物が肌をさらに敏感にする

もうひとつ、伺っていく中で気になったのが「化粧」のお話でした。

 

佐藤さんは、以前アトピーがひどかった時に「石鹸を使わないように」と指導されていたそうです。それ以来、体はお湯で洗い、石鹸は使っていない。ただ、外に出る時には化粧をされることがあり、化粧を落とすためにジェル状のクレンジングを使っている、とのことでした。

 

ここは、少し矛盾が生まれていました。石鹸がダメだと言われている状態で、化粧をしているというのは、実は理屈が通っていないんです(3)。石鹸を避けるほど肌が敏感になっている時期に、化粧という異物を上から乗せてしまうと、症状が落ち着く場所を失ってしまいます。

 

もうひとつ、クレンジングの選び方についても伺っていきました。ジェル状のものは水分が多く、油性の化粧を落とすには本来は向いていません。油性のものは油性のクレンジングオイルで一度乳化させてから落とす、というのが、肌への負担が少ない落とし方だ、と感じています(4)。落としすぎても、落とし残しても、肌のバランスは崩れていきます。

 

こうした見立てをもとに、この日の施術内容を選んでいきました。

施術内容と経過 見立ての中で「まだ炎症が残っている」「巡りが停滞している」というポイントが見えてきました。それに合わせて、この日はいくつかの施術を組み合わせていきました。

3つの治療ステップを左から右へ横一列に並べたプロセス解説図。Step 1は青い水紋のイラスト、Step 2は中央のオレンジ色の球体を左右から指先で挟んでいるイラスト、Step 3は緑と黄色のウェーブが流れるイラスト。それぞれのステップの下にはアプローチ方法(超音波、脇を挟む、首の後ろの詰まり解消)と、その改善結果の詳細なテキストが配置されている。

超音波でゴミを散らす

ほっぺに残る炎症に対して、この日は超音波を選びました。

 

炎症は、体の中でゴミ処理のようなことが起きている状態、と私は捉えています。処理の過程で、周囲の皮膚まで巻き込まれておかしくなる。そのゴミが集まった場所を、超音波の振動で散らしていく発想です(5)。

 

超音波は痛みもなく、佐藤さんも「気持ちいい」とおっしゃっていました。ゴミを散らすことで、次のターンオーバーで新しい皮膚が育つ余地を作っていくイメージです。やった後にほっぺを膨らませていただくと、左右で違っていた膨らみ方が、少し均等に近づいてきていました。

 

ほっぺへのアプローチと並行して、指の間のかゆみに対しても、少し別の角度から手を入れていきました。

脇の硬さを挟んでほどく

指の間のかゆみに対しては、指先だけを触ってもあまり変化が出ません。手そのものの巡りは、腕の付け根から作られているからです。

 

そこで、脇の下の内側にある硬い部分を、指で「挟む」ようにほどいていきました。ここは「つまむ」のではなく「挟む」。両側から支えるように押さえていくと、硬くなっていた場所が反応します(6)。

 

痛みが出る場所ほど、固まって進化が止まっている場所です。ゆっくり、痛みが強すぎない範囲で挟んでいきます。ほどいた後にもう一度パーを作っていただくと、指の開き方が変わってきていました。

 

腕まわりのケアが進んだところで、首肩の巡りにも触れていきました。

首肩を流すとおでこの赤みが引く

上を向いていただくと、顎の下が突っ張っている感じがある。首の後ろが詰まっている状態です。前ならいをして指先を見ながら首を後ろに倒す動きも、正常な動き方とは違うところで止まっていました。

 

首肩を流していくと、ほっぺだけではなく、おでこの赤みまで引いていきます(7)。首や肩の凝りは、頭や顔の巡りを止めてしまう場所として、私はいつも一緒に見るようにしています。

 

赤みが引いていく様子を、施術の途中で鏡で確認していただきました。「良くなっている」ということが目で分かる状態を作ると、続けていく力になります。

 

次に、これらの施術を通じて見えてきた考察をお話しします。

施術を通じての考察 この日の施術を通して、皮膚のケアという入り口から見えてきたことがいくつかありました。それは、佐藤さんだけではなく、同じような悩みを抱えていらっしゃる方にも通じる話だと感じています。

淡いパステル調の背景。中央にピンク、黄、緑の3つの異なるデザインの円があり、それらを1つのカラフルな曲線が横に貫いている。各円の下には「1. 指の開き(グーパー):動きが途中で止まらないか?」、「2. ほっぺの膨らみ:左右の差がなく均等に膨らむか?」、「3. 首肩の動き:前ならえをして首を後ろに倒した際、苦しさがないか?」と記載されている。最下部には解説のまとめを記した薄黄色のテキストボックスがある。

わかりやすい動きで自分の変化を測る

この日は3つの「わかりやすい動き」を試していただきました。グーパーで指の開き。ほっぺを膨らませて左右の差。前ならいをして首を後ろに倒す動き。

 

こうした動きは、体の中で何が起きているかを「見えるかたち」で教えてくれます(8)。息苦しさや、感覚が敏感になっていることは、ご自身では気がつきにくい部分です。それをわかりやすい動きに置き換えて確認していくと、変化が自分で追えるようになります。

 

「呼吸が浅い」と言われても、自分では分かりづらい。けれど、指先を見ながら首を後ろに倒す動きをしてみて「胸が苦しいな」と感じたら、そこが固まっている、と気づけます。

 

動きで測るということは、変化を積み重ねていく土台にもなります。

楽な状態を思い出せる体を作る

もうひとつ、施術中に大切にしているのは「今、楽だ」という感覚を、体に覚えておいてもらうことです。

 

苦しくて辛い状態に慣れてしまうと、そこから戻る手がかりを見失います。「これが本来の楽な状態だ」と一度でも思い出せる体になっておくと、日常の中で少しずれた時にも、戻る場所が分かる。

 

すぐに完璧を目指す必要はありません。今日1個、あるいはこの1週間で1個、動きが変わる場所を積み重ねていく。そうすると、悪い状態には戻りにくくなっていきます。こうした積み重ねが、日々のケアの軸になっていきます。

まとめ

淡い水彩背景。中央に青、ピンク、黄色の3つの円が重なり合うベン図があり、それぞれの中に「動きの観察」、「引き算のスキンケア」、「「楽な状態」の記憶」という3つの具体的なケア方法が解説されている。最下部には「体全体のめぐりを整えていくことで、皮膚は自然と落ち着いていく場所を見つけてくれます。」と大きく結論が書かれている。

指の間のかゆみと、ほっぺのカサカサ。この日の1コマは、皮膚に出ているサインを「皮膚だけで追わない」という視点でお伝えする回になりました。

 

同じように、アトピーの症状で「なぜここだけ残っているのか」と感じていらっしゃる方は、その場所の「動き」を一度見てあげてください。指なら、開きやすさ。ほっぺなら、膨らみやすさ。首肩なら、後ろに倒しやすさ。動きが止まっている場所には、血が滞りやすく、そこにかゆみが集まってきます。

 

皮膚の上に出ているサインを、皮膚だけで追わない。体全体のめぐりを整えていくことで、皮膚は自然と落ち着いていく場所を見つけてくれる、と感じています。

 

炎症が続いている間は、上から化粧などの異物を乗せないこと。落としすぎず、落とし残さない洗い方を選ぶこと。そして、自分の体の「楽な状態」を思い出せる動きを、1つでも持っておくこと。この3つを軸にしていくと、迷いが少しずつ減っていきます。

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

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