上半身にこもる熱を整える―梅雨入りの体調管理(30代女性)

この記事のあらすじ

【3行結論】
・梅雨入りに合わせて、上半身に熱がこもる「冷えのぼせ」の状態が見られた症例です
・脈と体感を頼りに、入浴・呼吸・頭部の熱対処をご自身で組み立てる方法をお話しします
・「触らない判断」と「頭の熱を冷ます道具」が、夏に向けた小さな備えになると感じています

梅雨に入り、湿気と気温の上下が重なる時期は、体にこもる熱の行き場が少なくなります。今回の30代女性の方は、お風呂に入ると顔や耳がすぐ赤くなり、入浴後に小さな仕込みのような盛り上がりが皮膚に出てくるとのお話を伺いました。
ここで意識したいのは「お風呂に入る・入らない」の二択ではなく、その日の体力と熱のさばけ具合に合わせて入り方を変える、という発想だと感じています。

【読み終わるころに分かること】

・冷えのぼせがなぜ起こるのか、3つの経路の見方
・脈と体感を使った「お風呂の入り加減」の調整方法
・頭の熱を冷ますアイス枕の使い方と、その理由
・仕込みのような皮膚反応を「触らない」と判断する根拠

【こんな方に向けて書いています】

梅雨から夏にかけて上半身に熱がこもりやすく、お風呂上がりに赤みやかゆみが残る方、在宅勤務や座り仕事が増えて体の巡りに不安を感じている方に向けて書いています。

【現在の状態】

初回から今回までの間に、ご本人の中で「自分の体に何が起きているか」を観察される姿勢が育っておられました。ですので、まず今のお体の状態を、ご本人の言葉も借りながら整理していきます。

〈上に上に熱が向かう体〉
お話を伺うと、もともと耳のあたりが熱い、と感じておられました。実際にお顔を見ると、お話の最中にも少し赤みが上がってきます。
これは熱がさばけずに、頭部や顔周りに溜まっているサインだと感じています。お腹の冷えからのぼせる方や、足の冷えから「冷えのぼせ」になる方もいらっしゃいますが、ご本人の場合は上半身に熱が向かいやすい状態でした(1)。
こうした熱のこもりは、お風呂の入り方や呼吸の浅さとも繋がっていると感じています。

〈入浴2〜3分で赤くなる体力〉
入浴は2〜3分ほどで上がられているとのことでした。「熱がこもっちゃうから入っていられない」というお話で、まさにご本人の感覚どおりだと思います。
無理に長く入る必要はないと感じています。これは体力がないというより、急に血流が良くなりすぎると心臓が処理しきれず、上半身に熱が溜まりやすくなる状態なんです(2)。
こうした循環の癖を踏まえると、お風呂の入り方そのものを工夫していく余地があります。

〈仕込みのような盛り上がりと、触らない選択〉
お風呂上がりに、小さな仕込みのような盛り上がりが皮膚に出てきて、それを触っているうちにもう一つ増えてしまった、というお話を伺いました。
かゆいから何かしてあげたい、というお気持ちはよく分かります。ただ、痛みや炎症が出ている場所は、刺激を続けるとリンパ周りの反応が起きて、近くに新たな仕込みを呼ぶことがあるんです(3)。
この「触らない」という判断軸は、この後の見立てや施術の中でも繰り返し出てきます。

施術者の見立て 今回見立ての軸にしているのは、「上に上に上がってしまう熱を、どこで止めるか」というところです。

冷えのぼせの3つの経路

熱がのぼせる経路には、足の冷えから来るもの、お腹の冷えから来るもの、目耳鼻口を使いすぎて内側から血液が頭に集まるもの、の3つがあると私は捉えています。お腹の冷えからのぼせる方は頭痛になる方も結構いらっしゃるんです(4)。
ご本人の場合、湿気対策はしっかりされていて、足元やお腹を冷やさない配慮も十分にできておられました。ですので、残りの経路として、目耳鼻口や脳の使いすぎから内側に熱を持つ視点を持っておくと、対処がしやすくなると感じています(5)。

胸式呼吸が入りにくい

口を閉じて鼻呼吸をしていただくと、お腹は膨らむのですが、胸の膨らみがほとんど出ない状態でした。本来は鼻呼吸でお腹も胸も同時に膨らむのが正常で、赤ちゃんの呼吸がまさにそうなんです。
胸式呼吸がしっかり入れば、肺に空気を集める動きが上にこもった熱を下に引っ張る働きが期待できます(6)。胸が膨らみにくいということは、熱を下げる経路がひとつ弱いということでもあります。
肋骨の動きの悪さや脇の硬さは、呼吸の通り道と神経の通り道、両方に関係してきます(7)ので、施術ではこの周辺を丁寧に見ていく必要があると感じています。

中枢神経の熱と、全身のこわばり

頭は中枢神経が集まる場所で、ここに熱を持つと全身がぎゅっと硬くなりやすいんです(8)。熱中症で熱けいれんが起きるのも、極端ですが似たような仕組みだと感じています。
ですので「頭の熱を冷ます」という発想は、単に気持ちいいだけではなく、体のこわばりをほどく根拠にも繋がっています。
こうした見立てを踏まえて、実際の施術と、ご自宅で再現していただける対処の話に進みます。

施術内容と経過 今回はサイクロン式の機器、アイス枕、そして手当てによる呼吸と脇の調整、という流れで進めていきました。

サイクロン5分で、体力を測る

サイクロン式の機器は、回転しながら振動を与えて血管に働きかけるもので、5分使うだけで5kmほど歩いたくらいの血流変化が起きると感じています(9)。
お顔を見せていただくと、5分かからずに耳と頬が赤くなってきました。これは、今の体力で熱をさばける量の目安として私は読んでいます。29度くらいの日でこの赤みが出るのなら、真夏に向けては、もう少し循環の余力を作っておきたいところです。
体力の見立てが立ったところで、次は「冷ます」工程に移りました。

アイス枕で、頭の輪郭が落ち着く

アイス枕は冷蔵もしくは常温で使うのがおすすめです(10)。冷凍にしてしまうと硬すぎて、かえって体がこわばってしまいます。頭の熱より低ければ、自然に熱の方が冷たい側へ動いていくので、強く冷やす必要はないと感じています。
喉仏の少し下、後頭部の出っ張りに合わせて枕を置くと、肩がちょうど乗る形になります。仰向けで寝ていただくと、頭の輪郭が横に膨張していた感じが少しずつ落ち着いていきました(11)。
冷ましていく中で「胸のあたりが熱く感じてきた」とお話しいただいたのですが、これは胸が新しく熱を持ったわけではなく、頭の熱が引いた分、相対的に胸の熱が気になってきたものです。体の中で何が起きているかを言葉にできる感覚は、すごくいいことだと感じています。

脇を流すと、腕までやわらかくなる

頭を冷ましながら、脇のあたりを丁寧に流していきました。脇や肋骨は神経の通り道で、ここの動きが固まると、腕がかゆい、肩がこわばる、といった反応に繋がってきます(12)。
1つずつ手を入れていくと、まず腕がやわらかくなり、続いて呼吸が楽になり、腕にあたたかさが戻ってきました。これは腕の末端まで血液が届くようになったサインだと感じています。
左側だけ施術した時点で、ご自身で「左の方がクールになってきた」とお話しいただいたのは、流れていなかった場所に巡りが入った結果だと感じています。
こうした変化を一つひとつ言葉で確認しながら進められたのは、ご本人の感覚の鋭さがあってこそで、次に向けた考察に繋げていきたいと感じています。

施術を通じての考察 今回の施術を通じて、私が特に伝えておきたいことを3つに整理しました。

脈と体感は、料理の塩加減と似ている

お風呂に入る前後で脈を診る習慣をお伝えしました。脈が早い・強い・弱いといった状態は、その日の体力と熱のさばける量を教えてくれる指標になります(13)。
これは料理の塩加減と似ていて、レシピ通り作れば失敗はしないけれども、その日の自分の体調に合わせて「これくらいでいい」を見つけられるようになると、何かが起きる前にコントロールができるんです。
脈の感覚が育ってくると、「今日はお風呂、入った方がいいか、足湯で済ませた方がいいか」という判断が、自分の中で立つようになっていきます。

在宅勤務と、骨盤の先回り

今週から在宅勤務に移られたとのことで、ご自身の中での自信に繋がっておられる様子がありました。一方で、座っている時間が増えると、骨盤周りに負担がかかりやすくなります。
歩く・動くの量が減ると、骨盤や股関節が固まりやすくなり、それがのぼせを増やす方向にも働いてくるんです(14)。今回は上半身が主訴ですので、まずはそちらを優先しますが、次回以降、お尻や下半身の硬さも見ていけたらと感じています。
こうした「次に出てきそうな場所」を予見しておくのは、不安を煽るためではなく、対処の引き出しを増やしておくためのものです。

触らない、という積極的な判断

小さな仕込みのような盛り上がりについては、痛みが出ている時点で「触らない」が一番の対処だと感じています。一生懸命やってあげたいというお気持ちは本当に伝わるのですが、流れが滞っている場所を刺激し続けると、かえって近くにもう一つ出てきてしまうことがあるんです(15)。
やらない、という選択は、何もしていないように見えて、実は積極的な対処の一つだと私は捉えています。
ご本人の感覚はすでに育ってきておられますので、「おかしいと感じたら放置しない」という軸さえあれば、必要な時に必要な手数が打てる状態になっていくと感じています。

まとめ

梅雨から夏にかけての体調管理は、「これさえやれば」という単一の正解がない領域だと感じています。

今回の症例で見えてきたのは、上半身に熱がこもる体には、冷えのぼせ・胸式呼吸の弱り・中枢神経の熱、という複数の要素が重なっているということでした。それぞれが単独で起きているのではなく、互いに影響し合っているんです。
ですので、対処も一つに絞らず、お風呂の入り方を工夫する、頭をアイス枕で冷ます、脇や肋骨をゆるめて呼吸を入れ直す、という複数の引き出しを持っておくと、その日の体に合わせて選べるようになります(16)。
脈と体感を頼りに、自分の体の「今日の塩加減」を読めるようになる。これは何か特別な技術ではなく、毎日の入浴前や寝る前に、ほんの少し意識を向けるだけで育っていく感覚だと感じています。
皮膚の上に出ているサインを、皮膚だけで追わない。体全体のめぐりを整えていくと、皮膚は自然と落ち着いていく場所を見つけてくれるんじゃないかな、と私は感じています。

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

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