アトピーの散らばる痒みは循環と熱こもりから 内側から整える視点

この記事のあらすじ

中央の球体から3方向に広がるカラーラインとともに、「原因のシフト」「負の連鎖」「解決へのアプローチ」の3つの柱を説明した概念図スライド。

【3行結論】
・複数箇所に散らばる痒みは、皮膚の表面ではなく循環と熱こもりから見直していきます
・掻くという行為そのものがヒスタミンを増やしてしまい、痒みをさらに広げてしまうんです
・お血(血流の停滞)をため込まずに流していく習慣が、炎症の起き方を静かにしていきます

今回の症例は、朝起きたときに背中がベタッとほてる、複数の箇所がバラバラに痒くなる、そんなお悩みを抱えていらっしゃる患者様のお話です。皮膚の症状というと、どうしても表面のケアに意識がいきがちなんですが、私は循環の滞りと熱のこもり方から見立てていく方が、身体の反応が素直に返ってくると感じています。

前回お伝えした化粧水をミストのように使う方法を実際に取り入れていただいた上で、今回はさらに一歩踏み込んで、身体全体の巡りをどう整えていくかを一緒に見ていきました。

【読み終わるころに分かること】

・アトピーの痒みが「循環」と「熱こもり」から生まれるとはどういうことか
・掻くという行為が痒みを広げてしまう身体の仕組み
・かっさで背中を整えたときに顔の状態まで変わってくる理由
・自分で身体の状態を観察するための「就寝前の姿勢」というものさし

【こんな方に向けて書いています】

長年アトピー性皮膚炎とお付き合いしていらっしゃる中で、痒みが出る場所が毎日変わる、朝のほてりが気になる、そういった揺らぎの理由を知りたいと思っていらっしゃる方に向けて書いています。

現在の状態 前回、乾燥やほてりが気になるというお話から、化粧水をミストのように使う方法をお伝えして、実際に取り入れていただいた回でした。今回はその後の変化と、身体全体の巡りをどう整えていくかを一緒に見ていきました。

氷山のイラストを中心に、水面上の「表面のサイン(結果)」と水面下の「内側のサイン(原因)」および「熱こもりの矛盾」を整理したスライド。

朝起きたときに背中がベタっとほてる

寝る前に化粧水のミストを使うようになってから、身体の反応が少しずつ変わってきたそうです。ただ、朝起きた時にはまだ背中がベタつく感覚が残っていらっしゃいました。この「朝のベタつき」は単なる寝汗ではなく、夜のあいだに熱が身体の中にこもって、朝までに逃げ切れなかったサインなんじゃないかな、と感じています(1)。触ってみると冷たくはなくて、じんわりと温かさが残っている状態でした。

熱がこもると、皮膚の表面は逆に乾燥します。ここが少し不思議に感じるところですが、循環が悪くて熱が内側にたまっていると、外側の皮膚には水分がうまく届かなくなるんです。ですので、乾燥対策は保湿だけで完結せず、内側の熱を逃がすことがセットになってきます。この熱のこもり方は、日ごとの体調によっても揺らいでくるところがあります。

痒みは日ごとに揺れる

痒みが出る場所も、その日によって変わっていらっしゃいました。今日は顔の状態がマシで、別の日には別の箇所がぐずついてくる。私はこれを見て、身体の弱いところに、その日の負担がその都度出ているんだな、と感じています。お酒を飲んだ日に少し赤くなる、暑さが厳しい日にほてりが強く出る、そういう「日ごとの揺れ」は、身体が今どこに負担を感じているかを教えてくれているんです。お酒を飲まれるようであれば、飲んだあとに水をしっかり摂っていただくくらいで、まずは大丈夫だと感じています。

こうした表面の揺らぎの奥には、循環と熱のこもり方という共通の背景があります。ここから、私がどう見立てているかをお話しさせてください。

施術者の見立て 複数の場所に散らばる痒みや朝のほてりは、皮膚の表面だけでは説明しきれません。私はいつも、身体の中の巡りと、姿勢や呼吸との連動から見立てていくようにしています。

人体と「お血」の概念イラストおよび「背中の接地度」を確認するセルフチェック表が記載されたスライド。

熱がこもる場所には循環の滞りがある

まず、循環の負担と熱のこもり、この2つが今の身体の中で同時に起きているんじゃないかな、と感じています。循環が滞ると、熱がその場所にとどまって発散されにくくなります。そうすると乾燥や痒みのサインが皮膚に出てきやすくなるんです。ですので、皮膚の表面だけを追いかけるよりも、まず「熱が抜けない場所」を見つけて、そこの巡りを緩めていくことが優先だと考えています。

そして、この循環の滞りを見るときに、私が併せて確認しているのが呼吸と姿勢のあり方なんです。

背中がベタッと床につくかどうか

もうひとつ大切に見ているのが、呼吸と姿勢の連動です。寝るときや座っているとき、背中がちゃんと床や椅子に接地しているか。これが今の身体の状態を測るものさしになります(2)。うつ伏せになって、腰と床のあいだにどれくらい隙間が空いているかを見てみてください。この隙間が大きいほど、背中や骨盤まわりが硬くなっています。胸が丸くなっていると腰が浮きますし、骨盤が硬くても腰は反ってしまうんです。両方の要素が重なって、結果的に腰が浮くことが多いんですね。

背中がしっかり接地できていれば、呼吸も深く入ります。呼吸が入ると、内側にこもった熱も出口を持てるようになる。ですので、私は寝る前と朝起きた時に、この「隙間の感覚」を自分でチェックしてもらうようお伝えしています。呼吸や接地の状態と並んで、もうひとつ大切にしている見方があります。

お血というゴミが炎症の火種になる

お血(おけつ)という言葉を使わせてください。これは血流が滞って行き場を失った状態のことなんですが、これが身体の中にたまっていると、そこが熱こもりの起点になっていることが多いんです(3)。今日の身体を触っていても、疲れて硬くなっているところに、このお血が溜まっているような手応えがありました。柔らかくするだけではなく、この停滞を受け流していく施術を継続的にやっていくと、なんだか楽になってきた、と感じられるようになる方が多いです。

こうした見立てをもとに、実際にどんな施術を進めたのかをお話しします。

施術内容と経過 今回は、超音波で背中全体を温めたあと、かっさで皮膚と筋肉の間にあるお血を散らしていく施術を中心に進めていきました。

左右色分けされた背景に「2層のアプローチ」「左右差の体感」「波及効果(背中→顔)」の3つのボックスを配置した解説スライド。

かっさで背中の熱を散らす

まず背中全体に超音波を当てて、深いところの緊張を緩めていきました。そのあと、かっさで表面と深部の間を撫でていきます。かっさは皮膚が先に削れてしまうこともあるので、届きにくい深いところにも、剥がれやすくして散らしやすくする使い方をしています。ホットパックで温めた場所は熱がこもりやすいのですが、これを流していくと、緊張とお血の両方が同時に緩んでいくんです(4)。

実際にかっさをかけたあとに、施術した側とそうでない側を比べていただく場面がありました。

右をやったあとの左右差

途中で、右側を中心にかっさをかけたあと、左側との違いを感じていただきました。「左が最初は違和感があった気がする」というお話でしたが、施術後には右側の方がすっきりしているのが明らかに感じられるようになりました。同じ身体の中で、施術した側とそうでない側の違いをその場で比べていただくと、「なるほどこれが流れる感覚か」という理解が身体の中に残ります。この体感が、ご自身でセルフケアをするときの基準点になっていきます。

背中を整えたあとの反応は、その場の背中だけにとどまりません。

顔にも背中の余韻が届く

背中の熱を散らしたあと、顔の状態もマシになってきていました。皮膚の症状は皮膚だけで独立しているわけではなく、身体全体の巡りと連動しています。背中に熱がこもっていれば、頭や顔にもその余韻が上がってきますし、背中が抜ければ顔の緊張も静かになっていくんです。姿勢の影響もあって、前かがみの姿勢が続くと顎や首に力が入ってしまい、これが顔の状態にも響いてきます。ですので、顔のケアも「顔だけを見ない」ことが大切だと感じています。

こうした施術の反応を通して、私が普段お伝えしていることを少し整理してお話しします。

 

施術を通じての考察 今回の症例を通じて、改めて患者様と一緒に確認できたことがいくつかあります。特に「掻く」という行為との付き合い方と、「疲れ」を自覚することの意味は、多くの方に共通する話だと思っています。

円形のループイラストと3つのカレンダーアイコンを添えて、「掻くvs流す」の切り替えと「3日の法則」を説明したスライド。

掻くという行為がヒスタミンを呼ぶ

かっさで身体をひと通り整えたあとに感じることなんですが、「掻く」という刺激そのものが、次のヒスタミンの反応を呼び起こしてしまうことがあります(5)。これは皮膚の近くでヒスタミンが増えて、痒みがより広い範囲に広がっていく流れなんです。ですので、掻くという行為で一時的にすっきりしたとしても、その後にまた別の場所が痒くなる、というループが生まれやすくなります。流す、受け流すという方向の刺激の方が、痒みの広がりを起こしにくいんじゃないかな、と感じています。

痒みへの向き合い方と並んで、もうひとつ大切にお伝えしている感覚があります。

疲れの自覚は身体のブレーキ

疲れを感じるということは、決して悪いことではありません。むしろ、疲れを感じられるからこそ、無理をしないというブレーキが働くんです。そして、疲れたと自覚するからこそ、そこを回復させようという身体の働きも動き出します(6)。逆に、疲れの自覚がないまま日々を過ごしていると、疲労が身体の中に静かに蓄積していきます。ここが怖いところなんですね。

そして、この疲労の蓄積を避けるために、私がひとつルールにしていることがあります。

3日連続で同じことをしない

月火水と3日連続で同じ負荷をかけると、身体が慣れてしまって、木曜日以降に「もういけそう」という錯覚が起こります。これは疲労が消えたのではなく、感覚が麻痺しているだけなんです。だからこそ、3日連続で同じことをしないこと、これをひとつのルールにしてほしいとお伝えしています。同じことの中には、同じ姿勢、同じ緊張、同じ我慢も含まれます。この「連続を切る」という意識が、蓄積を防ぐ最大の予防になっていきます。

こうしたひとつひとつの積み重ねが、今の身体の状態を作っているんじゃないかな、と感じています。

まとめ

水面に浮かぶ葉のイラストとともに「新しいものさし」「日々の羅針盤」および全体のまとめメッセージが書かれたスライド。

複数の場所にバラバラと出てくる痒みや、朝の背中のほてり。皮膚の表面だけを追いかけていくと、いつまでも新しい場所が痒くなって、なんだかキリがなくなってしまいます。ですので、循環の滞りと熱のこもり、この2つを起点に見直してみると、身体が返してくる反応がぐっと素直になってきます。

そして、掻くという行為はヒスタミンを呼び、疲れの自覚は身体のブレーキになる。この2つを頭の片隅に置いておいていただくだけで、日々の身体の見方が変わってきます。

同じように、朝のほてりや痒みの揺れで悩んでいらっしゃる方は、まずご自身の背中が寝るときや座っているときにちゃんと接地しているか、そこから見てあげてほしいと感じています。皮膚の上に出ているサインを、皮膚だけで追わない。身体全体のめぐりを整えていくことで、皮膚は自然と落ち着いていく場所を見つけてくれます。

 

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

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