熱がこもる夏、背中の変色とかゆみが伝えているサイン

この記事のあらすじ

3つの球体イラストと囲み枠で、肋骨と血のめぐり、熱の蓄積、適切なアプローチ手順というあらすじの3ポイントを説明するスライド。

【3行結論】
・夏ののぼせや背中のかゆみは、肋骨の硬さと血のめぐりの停滞から生まれていることがあります
・熱は一日で抜けるものではなく、日々蓄積していく性質を持っています
・症状を「更年期」で片づける前に、季節の負担と体の状態を丁寧に見てあげたい

夏の湿度と暑さは、私たちの体に見えないところで蓄積していきます。特に、前の季節の疲労を持ち越したまま夏に突入した体は、汗の抜け方、呼吸の深さ、寝つきの良さといった日常の細部に、少しずつ不調のサインを出してきます。

背中がなんとなくかゆい、首がずっと突っ張っている、寝ても疲れが取れない。この症例では、そうした夏特有の不調を「肋骨」と「めぐり」という切り口から整えていく過程をお話しします。症状ひとつひとつを別々の問題として追いかけるのではなく、体の中で起きているつながりを紐解いていくことで、どこから手を入れるのが近道かが立体的に見えてくるはずです。

【読み終わるころに分かること】

・背中のかゆみと血のめぐりの関係
・肋骨の硬さが呼吸や首、全身のこもりにどうつながるか
・のぼせを更年期と決めつける前に見るべき順番
・熱を体に蓄積させないための日常の工夫

【こんな方に向けて書いています】

夏になるとのぼせや背中のかゆみが強くなる方、寝ても疲れが抜けにくいと感じている方に読んでいただきたい内容です。「更年期だから」で説明が終わってしまうことに、どこか違和感を持っている方にも、別の見方の参考になればと感じています。

現在の状態 今回のセッションでは、患者様の背中と足に、これまでとは少し違う変化が見えていました。それぞれの部位を分けてお話ししていきます。

人体の背面のイラストを中心に、首の突っ張り・背中のかゆみとうっ血・ふくらはぎの張りという3つの症状を指し示して説明する画像。

背中のかゆみと、色が変わっているエリア

「背中とくるぶし、ちょっと離れた場所が、なんだかかゆい感じがした」というお話から今回は始まりました。背中を見せていただくと、上半分から肩甲骨のあたりまで、周りと比べて少し色がくすんで見えるエリアがあります。皮膚全体がきれいな部分と、少し色が変わっている部分の境目がはっきりしている。この色の違いは、背中がだんだん硬くなり、動きが悪くなってきた場所に血が溜まっているサインなんです(1)。世間で「うっ血」と呼ばれる、血の流れが停滞している状態と近いと感じています。

背中だけでなく、体の他の場所にも今日は気になる変化が並んでいました。

足の張りと、常に突っ張る首

足も見せていただくと、ふくらはぎのあたりは全体的に張っていて、ご自分でも触ると痛いと感じる状態でした。夏場は心臓にも負担がかかりやすい時期(2)ですので、ふくらはぎのむくみや張りは特に出やすくなります。

さらに、首についてもお聞きすると「最近、常に突っ張っている感じがある」とのこと。前習いの姿勢で腕を上げると、突っ張り感がはっきり出てきます。ところが、万歳をした後に上を向くと、意外なほど動きやすい。ここに、今日の体の状態を読み解く大事なヒントが隠れていました。

こうした皮膚と足と首、それぞれの現在の状態を並べてみると、実は一本の線でつながっている見立てが浮かび上がってきます。

施術者の見立て 観察した3つの部位を、体の中の一つの流れとして捉え直していきます。

梅雨から夏への身体の変化プロセスと、更年期と決めつけるRoute A・構造から解き明かすRoute Bの2つの対処ルートを示す図解スライド。

血が溜まり、熱がこもる背中

背中は、姿勢や呼吸の癖によってだんだん硬くなり、動きが悪くなっていく場所です。硬くなると血のめぐりが悪くなり、血が溜まった場所には熱がこもります(3)。そこに汗をかくと、汗が抜けきらずに汗もっぽい状態になり、かゆみとして表面に出てくる(4)。今回背中に見えていた色の変化とかゆみは、この一連の流れが背景にあるのではないかと感じています。

では、なぜこのタイミングで背中に血が溜まりやすくなっているのか。少し時間を遡って、前回からの流れを振り返ってみたいと思います。

梅雨の呼吸の負担が、夏に持ち越されてきた

前回のセッションは梅雨の時期で、空気の重さで呼吸が浅くなりやすい季節でしたので、肋骨や胸まわりの動きを整えることに時間をかけていました。今、季節が夏に移り、その梅雨で溜まった呼吸の疲労が、まだ体に残っている印象があります。

肋骨が硬い状態が続くと、肺の中の血流も動きにくくなり、全身の循環にも影響が出てきます(5)。梅雨に負担を溜め込んだ体が、そのまま暑い時期に突入すると、のぼせやすくなる方がとても多いんです。今の症状は、この2つの季節が重なった結果として現れていると感じています。

この「のぼせやすさ」を、ご本人がどう受け止めるかで、その後の対応が大きく変わってきます。

のぼせを「更年期」で片づけない

女性の方でこの時期にのぼせが強く出ると、「更年期のせいでしょう」と決めつけられてしまうことがよくあります。ですので、私はそこにすぐ結論を持っていかないようにしています。季節や体の状態から説明できるものを先に取り、それでもなお残るのなら、そのときに次の可能性を考える。この順番がとても大事なんじゃないかな、と。

いきなり「更年期だから仕方ない」と受け入れてしまうと、ホルモン注射や漢方といった話に進んでいってしまいます。是非とも、なぜこの時期にだけのぼせが強くなるのか、その理由をまず見てあげる。そこから始めたいと感じています。

この見立てを持ちながら、実際に体に触れて確かめていく段階に入ります。

施術内容と経過 見立てを踏まえて、背中と首まわりに対して行った施術と、そこで起きた変化をお話しします。

音波で老廃物を剥がすイラストと、肋骨の弛緩が首の可動域を広げる同心円状の波紋イラストによる施術メカニズムの解説画像。

超音波を「かっさ」のように使う

背中の血の停滞に対しては、超音波を使って施術していきました。通常、超音波はジェルをなじませて滑らせるように使うのですが、私はこれを「かっさ」のように、老廃物を剥がすイメージで使っています(6)。

音の振動で溜まっていたものが柔らかくなり、剥がれやすい状態になったところを、超音波の当て方で流していく。アイスクリームスプーンで固いアイスをすくうときに、金属のスプーンだと簡単にすくえる、あの感覚に近いんです。実際にやっていくと、背中の一部が「歯石みたいに固まっている」ことがわかる場所もあります。汚れが歯垢になり、そのまま固まると歯石になる。あれと同じような感覚(7)で、体の中にも老廃物がこびりついているんです。

削るように施術していくうちに、背中がすっきりしていくのを感じました。呼吸も楽になり、背中の変化が出てきたところで、もうひとつ確かめたい場所がありました。

肋骨がゆるむと、首が上を向く

背中の施術を進めた後、あらためて首の動きを確認しました。すると、施術前は突っ張って動きにくかった上向きの動作が、はっきりとやりやすくなっています。首を直接ほぐしたわけではありません。肋骨まわりが動きやすくなっただけで、首の可動域が変わったんです。

これは、首の突っ張りの大本が「首そのもの」ではなく、その下の肋骨の硬さから来ていた(8)ことを示しています。食いしばりや前かがみの姿勢で肋骨が開かなくなると、代償として首が前に出て、そこに負担が集中してしまう(9)。ですので、首だけをほぐしてもすぐに戻ってしまう方が多いんです。

今回の経過を踏まえると、体の中で起きていることは、ひとつのテーマに収束していく感覚がありました。

施術を通じての考察 施術中にお話ししていた、日々の暮らしのなかで意識しておきたい3つのテーマを整理しておきます。

雨雲・足湯・水グラスのイラストとともに、熱の管理・食事とヒスタミン・汗の機能という明日からできる3つの習慣と対策をまとめたスライド。

熱は日々蓄積するもの

夏の暑さは、その日一日で抜けるものではなく、日に日に蓄積していく性質を持っています(10)。耳を触ってあったかい状態が続いていると、それは熱がこもってきているサインです。ここで冷たさをどこかで作らないと、体はどんどん熱を溜め込んでしまいます。

私がよくお伝えしているのは、水風呂か足湯を活用する方法です。水風呂が難しい方は、足湯から始めるといい。のぼせて上に上がった熱を、足元から下に下ろしてあげるイメージです(11)。お腹も温まり、のぼせも落ち着き、お風呂上がりに汗がちゃんと止まるようになります。だらだらと汗をかき続ける状態を、いったんリセットしてあげる。この一手間で、夜の寝つきが変わってくる方が多いです。

熱の管理と並んで、この時期に気にしておきたいのが、体の中に取り込むものへの向き合い方です。

ヒスタミンは「薄めて出す」でいい

トマトなど、いわゆるヒスタミンを含む食品を「食べてはいけない」と厳しく考えている方がいます。ですので、私は、食べてしまったらいっぱい水を飲んで薄めて排泄すれば問題ない(12)、とお伝えしています。アルコールと一緒で、薄めて出すという発想です。

むしろ注意したいのは、緑茶やエネルギードリンク、アルコールがヒスタミンの分解を邪魔してしまうこと(13)です。これらを無意識にたくさん摂ると、ヒスタミン自体は増えていなくても、分解が追いつかず相対的に増えたのと同じ状態になってしまう。皆さんが「体に良さそう」と思って飲んでいるものが、実はそちらの方が影響していることもあるんです。

食べたものを深刻に受け止めるより、「ちょっと食べ過ぎたな」と感じたら早めに水で薄める。この感覚で十分だと考えています。

食べ物や飲み物と同じくらい、汗そのものとの付き合い方も、この時期の大事なテーマになってきます。

汗をかけないと、秋の乾燥に持ち越す

今の時期に汗をかいてもいい、むしろかいた方がいい理由があります。夏場に汗をかいて体からゴミを出しておかないと、秋口に汗の機能が動きにくくなり、乾燥がより強まってしまう(14)からです。

「今、汗をかいてはダメ」と思い込んで汗を止めてしまうと、めぐりが悪くなり、老廃物がまた歯石のように固まってしまいます。そして季節が変わったときに乾燥が強く出て、皮膚のトラブルにつながっていく。悪循環の入り口です。

ですので、内側の炎症を落ち着かせながら、今の時期に汗をきちんとかける体でいる。これが秋以降を楽に過ごすための大事な土台なんじゃないかな、と感じています。

こうした一つひとつの工夫を、体全体としてどう捉えるか。ここが今回の症例から見えてきた大きな流れです。

まとめ 夏の不調を整えるとき、どこから手をつけていくかで、その後の楽さが変わってきます。

彩風の肋骨グラフィックと、全体のめぐり・肋骨ケアの重要性・正しいアプローチ手順についてのまとめテキストが掲載されたスライド。

症状の場所より、めぐりを見る

背中のかゆみ、足の張り、首の突っ張り、のぼせ。今回の症例では、これらが別々の問題ではなく、血のめぐりと熱のこもりという一本の線でつながっていました。皮膚に出ているサインを皮膚だけで追わずに、体全体のめぐりを整えていくと、皮膚は自然と落ち着いていく場所を見つけてくれます。

夏場にのぼせや背中のかゆみを感じている方は、まず「今、体のどこに熱が溜まりやすくなっているか」を、耳のあたたかさや汗のかき方を通じて見てあげてください。

そして、どこから手をつけていくかにも順番があります。

肋骨から始める理由

季節と体の負担が重なっているときほど、肋骨の状態から整えていくことが、遠回りに見えて近道になります。肋骨がゆるむと呼吸が深くなり、肺の中の血流が動き、全身のめぐりが立ち上がってくる。首の突っ張りも、食いしばりも、その先で自然と楽になっていく。

「更年期だから」「歳だから」で締めくくる前に、季節の負担と体の構造から見直してみる。この順番を持っておくことで、体が楽になる道すじが、ずっと見つけやすくなるんじゃないかな、と感じています。

 

ページ監修者:阿部英雄

執筆者阿部英雄の画像

英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

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