熱がこもって抜けない夏、体のサインを一つずつ紐解いた症例

この記事のあらすじ

「この記事のあらまし:3つの結論」という見出しの下に、蓄積する熱、誤った冷却の罠、全身の連動性という3つのカード形式でまとめられたスライド。

【3行結論】
・体の熱は一日一日と蓄積していき、抜けきらないと全身のサインとして現れる
・冷たいシャワーや冷たい飲み物も、やり方を間違えると内臓の冷えにつながる
・のぼせや手のこわばりは表面だけでなく、呼吸・姿勢・内臓と連動している

夏場に「なんだか熱が抜けない」と感じる方は少なくありません。この症例では、先週よりも症状が強く出ていた方に対し、熱がこもってしまう理由を一つずつ探っていきました。手のこわばり、頭痛、突然の発汗、その全てが「熱を体の外に出しきれていない」という一本の線でつながっていました。

【読み終わるころに分かること】

・熱こもりのサインは顔だけでなく、手・脇・胸下・ふくらはぎに出るということ
・冷たいシャワーや冷たい飲み物が、やり方次第で内臓を冷やしてしまう仕組み
・鎖骨や脇の硬さが、手のこわばりや呼吸の浅さとつながっていること
・体が「悪い状態」に慣れてしまう三日という区切り

【こんな方に向けて書いています】

夏の暑さで体調が重い方、冷やしているのにのぼせや頭痛が抜けない方、自分の体が発するサインを読み解けるようになりたい方に向けて書きました。

現在の状態 来院時、患者様の顔は前回よりも赤く、明らかにのぼせている状態でした。手のこわばりも強く、指の第一関節が思うように曲がらない。頭痛も出ている。夏場によく見られる不調ですが、この方の場合は「先週より強く出ている」という自覚がありました。

中央に熱感を示す腕のイラスト、左右に「表面に滞る熱と緊張」と「隠れた冷えとリセット不良」の症例症状が対比されたスライド。

顔の赤みと手のこわばりが同時に出ていた

まず目に入ったのが顔全体の赤みです。前回よりものぼせが強く、患者様ご自身も「今日はすごく頭が痛い」とおっしゃっていました。それに加えて、手を握ると力が入りにくく、第一関節を曲げるのも辛そうな状態。手の甲や指の付け根あたりに熱を持って、腫れぼったい感覚もあったようです。熱がこもった状態は顔だけでなく、手にも同時に表れることがあります(1)。
熱のこもり方は顔だけを見ていても分かりません。手・腕・脇の下・胸の下、そういった場所を一つずつ触れて確認していくと、症状は全身に広がっていました。

突然の発汗と、冷たい手足という組み合わせ

もう一つ、この方が気になさっていたのが「座ってテレビを見ているだけなのに、急に汗が出てくる」という現象でした。汗をかいた後は手足が冷たくなる。体は熱がこもると、汗をかいて冷まそうとする反応を示します(2)。ただ、この方の場合はそのリセットが上手く働いていない印象でした。汗が急に出る時に耳が熱くなっていないか、お腹が硬くなっていないか、その瞬間の体を観察してみることをお伝えしました。
かゆみが出た時に体を観察するのと同じで、汗が出た時にも体の反応を見てあげる。この習慣が、自分の体の癖をつかむ手がかりになります。
こうした表面のサインの背景には、必ず何らかの内側の理由があります。次に、この状態がなぜ起きているのかを見立てていきました。

施術者の見立て のぼせや手のこわばりを「熱のせい」と一言で片づけないことが大事です。この方の体を診ると、熱を溜めてしまう理由が複数重なっていました。

1から4までのステップで熱がこもり身体不調に至るプロセスを段階的に説明したフローチャート形式のスライド。

熱は一日ずつ蓄積していく、という前提

まず押さえておきたいのは、体にこもった熱は一日で抜けるものではないということです。日を追うごとに少しずつ溜まっていき、リセットしきれない日が続くと蓄積されていきます(3)。睡眠不足が重なると、この蓄積のスピードはさらに上がります(4)。この方の場合、暑さと睡眠不足と気圧の変動が重なっていた時期で、いろんな条件が絡み合って熱が抜けきらなくなっていました。
「先週は大丈夫だったのに」ではなく、「先週の分が今週に残っている」という視点で見ていくことが必要です。

脳のオーバーヒートと呼吸の浅さの連動

のぼせにはいろんな理由があります。脳が熱を持ちすぎると頭がこわばり、それに引きずられるように呼吸が浅くなります(5)。呼吸が浅くなると胸郭の動きが小さくなり、大胸筋や肋骨周りが硬くなります(6)。この方も胸の下や鎖骨まわりに強い硬さがありました。
呼吸が浅くなる原因は、気候だけではありません。猫背などの姿勢や、内臓の疲れも呼吸の浅さに影響します(7)。だから「呼吸が浅い」という一つの現象からでも、体のあちこちに影響が広がっていきます。

内臓の冷えものぼせを引き起こす

意外に思われるかもしれませんが、内臓が冷えるとのぼせが起きることもあります(8)。表面が熱くなりすぎると、体は表面に血液を集めるので、内臓側の血流が減って冷えます。日焼けで内臓が冷えるのはこの仕組みです。この方は胃が硬く冷えている状態で、胃の硬さがすねの張りにも影響していました(9)。
シャワーで表面を冷やしていたものの、冷たい飲み物の摂り方や、冷ましきれていない入浴の仕方が重なって、内側の熱が抜けにくくなっていました。
これらを踏まえて、実際の施術に入っていきました。

施術内容と経過 熱を溜めている理由が複数ある以上、対処も一つずつ順を追って進めていく必要があります。この日は、症状の出ている手ではなく、影響を与えている遠くの部位から順に整えていきました。

「鎖骨・脇の下(呼吸の解放)」と「胃・肝臓・足(内臓血流の改善)」の2つのアプローチ内容と施術経過が記されたスライド。

鎖骨・脇の下から呼吸を通す

まず取りかかったのは鎖骨まわりと脇の下です。鎖骨まわりや脇の下の詰まりは、腕の動きだけでなく胸の呼吸の深さそのものにも影響します(10)。さらに脇の下には腕の神経の通り道があり、この部分の硬さが手のこわばりにつながることもあります(11)。
実際に鎖骨の下側と脇の下に触れると、患者様は「痛いですね、全然違います」と反応されました。ここを緩めるだけで、握力の入り具合が変わってきます。同じように、胸を覆うか鎖骨を空けるかで、どちらが楽かも一緒に確認しました。ご自身で「隙間が空いた方が楽になる」と気づかれた瞬間、体の何が問題だったかが少し見えてきたようでした。

胃と足を経由して、体全体の血流を整える

続いて胃のあたりと足に移りました。胃の位置に手を当てて、そこが膨らむように呼吸をすると、内臓の血流が動きやすくなります(12)。この動きだけでも、右手側の握りやすさが変わってきました。
右側の方が左よりも硬く、特に肝臓の位置にあたる部分に疲労が溜まっていた印象があります。血液が溜まりやすい方でもあるので、時々昼寝をして体を休めることもお伝えしました。
一つずつ緩めていくと、患者様も「あっ、本当だ、さっきよりいい」と変化を実感されていました。

施術後の握りやすさが、来院時と明らかに変わっていた

施術後に改めて手を握っていただくと、来院時とは比べ物にならないほどスムーズに動くようになりました。「全然違う」と何度もおっしゃっていたのが印象的でした。手そのものはほとんど触っていません。それでも変化が出るのは、体の遠くにある「握りにくさの原因」を一つずつ外していったからです。
この体の変化から見えてきたことを、次に整理していきます。

施術を通じての考察 症状が出ている場所を直接触るだけでは、根本の解決に届かないことがあります。今回の症例で見えてきたのは、体からのサインを読み解く感覚の大切さです。

左側に「3日間の法則」、右側にNGとOKの冷やし方を入浴・飲料別に比較したマトリックス表が配置されたスライド。

三日を境に、体は「悪い状態」に慣れてしまう

体には、続いた状態を「普通」と認識する性質があります。熱がこもっている状態が三日以上続くと、その感覚が当たり前になり、具合の悪さに気づきにくくなります(13)。この方も、日を追うごとに耳や目、口が乾燥してきたとおっしゃっていました。これは熱が噴き出しているサインですが、体が慣れてしまうと本人はその変化にすら気づけません。
だからこそ、毎日の体の状態を「押していたくないか」「硬くなっていないか」といった具体的な感覚でチェックしていくことが必要です。感覚だけに頼ると、慣れの中で埋もれていきます。

冷やし方にも「表面と深部」の違いがある

冷たいシャワーを浴びていても、熱が引かないという相談は少なくありません。表面の皮膚は冷えていても、体の芯まで冷ましきれていないことが多いのです。この方には、お風呂上がりに足湯に切り替える方法をお伝えしました。浴室に座って足だけをつけると、熱は下に降りていきます(14)。表面を冷やすよりも、熱を下に落とす方が結果的に早く冷めることがあります。
また、あたたかいお風呂と冷たいシャワーを交互に繰り返す交代浴は、体の芯から温まる働きが期待できる方法です(15)。冷たいと感じた後に芯から温まっていく、この体の反応を知っておくと入浴の質が変わります。

 

冷たい飲み物は「味わってから飲む」だけで結果が違う

夏場は冷たい飲み物が増えますが、この摂り方にも工夫があります。冷たいものをごくごくと一気に飲むと、内臓が直接冷やされてしまいます(16)。少し口の中に留めて、冷たさを味わってから飲み込む。それだけで、頭や口腔の熱を冷ましつつ、内臓の冷えを防ぐことにつながります。
「アイスを一気に食べるとキーンとする」あれと同じで、体の中は思っている以上に敏感に反応しています。飲み方や食べ方の癖が、結果として熱こもりや冷えを作っている場合があります。
こうした一つ一つの気づきが、体調を整えるうえでの支えになっていきます。

まとめ

記事の総括文章と、下部に3つの重要メッセージカードが並んだ「まとめ」スライド。

体は常に何らかのサインを出しています。それが顔に出ることもあれば、手・脇・ふくらはぎ・胃といった離れた場所に出ることもあります。今回の症例で見えてきたのは、症状の出ている場所と原因の場所が同じとは限らないという事実です。

熱がこもって抜けない、のぼせが続く、頭が重い、手が握りにくい。これらは別々のトラブルに見えて、実は一本の線でつながっていることが多いものです。ですので、症状のある場所だけを冷やしたり揉んだりしても、変化が続かないことがあります。

大切なのは、体からのサインに気づき、それが何を訴えているのかを読み解いていく姿勢だと感じています。三日続くと感覚が慣れてしまうからこそ、毎日の小さな違和感を見逃さないことが、悪化を防ぐ最初の一歩になります。

冷たいシャワーの浴び方、冷たい飲み物の飲み方、お風呂の入り方、姿勢、呼吸。どれも当たり前のことのように見えますが、その一つ一つが積み重なって体調を作っています。ご自身の体に丁寧に耳を傾けていくことが、この暑い季節を乗り切る何よりの支えになると感じています。

ページ監修者:阿部英雄

執筆者阿部英雄の画像

英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
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【書籍】
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