アトピーの顔の赤みはストレスが原因?呼吸や身体の緊張との関係

アトピーによる顔の赤みは、ストレスや身体の緊張によって変わるのでしょうか? 今回は、皮膚の赤みに加えて、気分の落ち込みや疲労感が続いていた方の症例です。 呼吸や身体の緊張に着目した施術を通じて、顔の赤みや身体の重さにどのような変化が見られたのかをご紹介します。
顔の赤みと疲労感、所見と見立て、施術、本人と施術者が確認した変化、医療を継続した日々のケアを読む順に並べた5カードのあらすじ。

【現在の状態】

室内で足元に片手をそっと添えた、足と手元のクローズアップ。

前回より落ち着いていた顔の赤みと、気分の変化

来院時にお顔の状態を確認すると、前回よりも赤みが少なくなっているように見えました。
この一週間の様子を伺うと、気分はおおむね落ち着いていたものの、一日だけ少し落ち込むことがあったそうです。その日は全身が重く感じられ、それ以外の日は比較的リラックスして過ごせていたとのことでした。

以前から続く疲労感と、睡眠・背中の状態

睡眠について伺うと、意識して睡眠時間を確保するようにしているとのことでした。
一方で、以前から続いている疲労感は完全には抜けていないものの、少しずつ軽くなっている感覚があるそうです。
また、以前は背中がギューッと締めつけられるような感覚がありましたが、最近はあまり強く感じなくなっていました。

触診で確認した足のむくみと身体の硬さ

実際に身体に触れてみると、足にはむくみや硬さが見られました。足裏を含めて、場所によって硬さに違いがありました。
背中なども触れながら、左右差や周囲の筋肉との違いを確認しました。
こうした皮膚の状態や日常の体調、触診で確認できた身体の特徴をもとに、今回の施術方針を考えていきました。

【施術者の見立て】

足のむくみ・硬さと頭部の硬さを実線枠、呼吸や身体の緊張への見立てを点線枠に分けた説明図。

顔の赤みと気分の変化には、呼吸や身体の緊張も関係する

今回、顔の赤みは前回より落ち着いていましたが、疲労感はまだ残っており、気分が落ちた日には全身の重さも感じていました。
私は、こうした状態には、皮膚の炎症だけでなく、呼吸や身体の緊張、血流の変化なども関わっているのではないかと考えました。(1)
例えば、考え事やストレスが続くと、頭や首の周囲に力が入りやすくなります。また、呼吸が浅くなったり、無意識に息をこらえたりすると、顔がほてったり赤みが強くなったりすることがあります。
こうした変化は、血流や自律神経の働きとも関係する可能性があります。ただし、今回の顔の赤みがそれだけで生じているとは限りません。
そのため、皮膚の状態だけを見るのではなく、呼吸や頭・首の緊張も含めて確認する必要があると考えました。

※補足:健康な人を対象とした徐呼吸の系統的レビューでは、ゆっくりした呼吸に伴う自律神経指標の変化や、不安の軽減などが報告されています[参考文献1]。また、筋弛緩法や瞑想などのリラクゼーション訓練をまとめた研究でも、不安の軽減が報告されています[参考文献2]。ただし、これらは今回の方の顔の赤みの原因や、呼吸・頭や首への施術の効果を示した研究ではありません。

足のむくみや身体の硬さが、かゆみや疲労感に与える影響

足にはむくみや硬さが見られました。私は、こうした状態を身体の「滞り」と捉えています。
むくみがあると、皮膚が張ったり、違和感やかゆみを感じたりすることがあります。また、身体の緊張が続くと、皮膚への刺激や不快感が増し、かゆみを感じやすくなる場合もあります。(2)
血液やリンパの循環、炎症、皮膚の状態は互いに関わっていますが、足の硬さやむくみだけで、アトピーの炎症の原因を判断することはできません。
一方で、かゆみや身体の不快感が続くことは、睡眠や日常生活の負担となり、気分の落ち込みにも影響することがあります。
私は、こうした身体の負担を一つずつ減らしていくことが、皮膚だけでなく心身の状態を整えるうえでも大切だと考えています。

呼吸と循環を整え、皮膚と心身の負担を軽くする施術方針

今回の方は、皮膚の症状に加えて、疲労感や気分の落ち込みも抱えていました。
そのため、心療内科での治療は継続していただきながら、当院では身体の状態を整えることを目的に施術を進めています。
具体的には、足元のむくみや硬さ、胸の前や背中の緊張に着目し、呼吸をしやすくすることや、身体の循環を妨げるような緊張を和らげることを目指しました。
身体の不快感が軽くなれば、かゆみや皮膚への負担が減る可能性があります。また、身体が楽になることは、気分の安定を支える一つの要素にもなると考えています。(3)
ただし、身体への施術だけでうつ症状やアトピーが改善すると断定できるものではありません。
今回は、施術前後の身体の重さや呼吸の感覚、顔の赤みを確認しながら、身体にどのような変化が現れるかを確かめる方針としました。

【施術内容と経過】

足元・胸・背中、呼吸、頭部への施術の図と、本人の重さの実感、施術者の赤みの観察を分けたカード。

呼吸と身体の巡りを整え、全身の重さを軽くする施術

今回、足にはむくみや硬さがあり、身体全体にも疲労感が残っていました。私は、こうした状態には身体の緊張や循環の偏りが関わっているのではないかと考えました。
そこで、足元や胸の周囲、背中などに施術を行い、身体の緊張を緩めながら、呼吸をしやすい状態に整えていきました。
特に胸や背中には、タイ古式マッサージで用いられる「トークセン」という道具を使い、振動を与える施術を取り入れました。これは、胸郭周囲の緊張を緩め、呼吸に伴う身体の動きを引き出すことを目的としたものです。
施術中には、鼻から息を吸い、口を開けてゆっくり吐く呼吸も繰り返していただきました。
呼吸が浅くなり、身体に力が入り続けていると、首や胸の緊張が強まり、顔のほてりや赤みにつながることもあると考えています。
そのため、呼吸と身体の緊張を整えることで、全身の巡りを妨げる負担を減らし、皮膚の状態にも良い変化が現れることを目指しました。

頭の緊張を緩め、顔のほてりや赤みに働きかける

続いて、顎や頭部の状態を確認しました。特に頭頂部には硬さがあり、触れると痛みを感じる部分もありました。
私は、考え事やストレスが続くことで、頭や顔の周囲にも緊張が生じ、血流の変化やほてりに関わることがあると考えています。
そこで、頭部を指で軽くたたくタッピングや、やさしくこする施術を行い、頭の緊張を緩めていきました。
また、ご自宅でも取り入れられるよう、タオル越しに頭をやさしくこするセルフケアをご案内しました。
頭が重い、考え事がまとまらない、頭の中がもんもんとする。こうしたときにも、頭部へのやさしい刺激によって緊張が和らぎ、気分を切り替えるきっかけになることを期待しています。
頭部の緊張を減らすことは、顔のほてりや赤みを考えるうえでも、私が大切にしている施術の一つです。

身体の重さと顔の赤みに見られた施術後の変化

呼吸や身体の巡りを意識した施術の後、いったん立っていただき、身体の重さを確認しました。
ご本人からは、施術前との違いが分かり、重さも感じにくくなったというお話がありました。
さらに、頭部への施術を終えた後には、顔の赤みも施術前より落ち着いているように見えました。
私は、顔の赤みには皮膚そのものの炎症に加えて、血流の変化による充血やうっ血が関わる場合もあると考えています。
例えば、長時間続く赤みと、一日の中で強くなったり弱くなったりする赤みでは、背景にある要因が異なることがあります。今回のように短時間で赤みが変化する場合には、皮膚の炎症だけでなく、血流や体温調節の影響にも目を向けています。
ただし、赤みの変動だけで炎症と血流の影響を区別できるわけではありません。
今回の施術では、呼吸や身体の緊張を整えた後に、身体の重さと顔の赤みに変化が見られました。
こうした経過から、皮膚への外用薬によるケアだけでなく、呼吸や身体の緊張に目を向けることも、日常の不快感を減らすための一つの方法になると考えています。
薬による治療は継続しながら、ご自身でも呼吸や頭部の緊張を整えるセルフケアを取り入れていただくことをお伝えしました。

【施術を通じての考察】

当日の重さの実感と赤みの観察を記したカード、今後の肌・疲労感・気分を確認する空欄のカレンダー、生活ケアの小図。

身体の重さや呼吸の変化から、皮膚症状との関係を考える

今回の方は、顔の赤みが前回より落ち着いていた一方で、疲労感や気分の落ち込み、全身の重さが残っていました。また、実際に身体に触れると、足のむくみや硬さ、頭部の緊張も確認できました。
私は、こうした身体の状態が呼吸や循環に負担をかけ、顔の赤みやほてりなどの皮膚症状にも関わっているのではないかと考え、施術を行いました。
胸や背中への振動刺激と呼吸を促す施術を行った後、ご本人は立ったときの身体の重さに違いを感じられました。私は呼吸もしやすい状態になっていると感じましたが、ご本人から呼吸が楽になったという明確な回答までは確認していません。
この反応から、身体の緊張や呼吸の状態が、全身の重さを感じることに関わっていた可能性があると考えています。(2)
また、頭部への施術後には、顔の赤みも落ち着いているように見えました。
顔の赤みには、皮膚そのものの炎症だけでなく、血流の変化による充血やほてりが関わる場合もあります。今回のように施術の前後で赤みが変わることは、身体の緊張や血流の状態にも目を向けるきっかけになります。
ただし、今回の変化だけで、呼吸や循環が赤みの原因だったと判断することはできません。

身体の緊張を整えることが、肌とメンタルの負担を減らす一歩になる

今回の施術では、足のむくみや硬さ、胸や背中の緊張、頭部の硬さなど、それぞれ異なる場所に働きかけました。
特に、トークセンによる振動刺激や呼吸の促し、頭部への施術を通じて、身体の重さや顔の赤みに変化が見られたことは、私にとって大切な確認事項でした。
身体の緊張やむくみが続くと、不快感やかゆみを感じやすくなることがあります。また、皮膚のかゆみや疲労感が続くことは、睡眠の質や気分にも影響する場合があります。
そのため私は、皮膚の状態だけを整えるのではなく、身体の緊張や呼吸の負担を減らすことも、アトピーや皮膚疾患のある方にとって大切だと考えています。
今回、身体が軽く感じられ、顔の赤みにも変化が見られたことから、身体への働きかけが日常の不快感を軽減する一つの支えになる可能性を感じました。
ただし、その場での変化が、長期的な皮膚症状や気分の改善につながるかどうかは、引き続き経過を確認する必要があります。

睡眠とセルフケアを続け、身体と皮膚の変化を確認していく

今後も大切にしたいのは、施術を受けたときだけでなく、日常生活の中でも身体に負担をため込まないことです。
今回、ご本人は睡眠を意識して確保されていました。睡眠は心身の回復を支えるだけでなく、皮膚の状態を考えるうえでも大切な要素です。(3)
また、呼吸が浅くなったり、頭が重く感じられたりするときには、ゆっくり息を吐くことや、タオル越しに頭をやさしくこするセルフケアをご案内しました。(4)
こうしたケアは、身体や頭部の緊張を和らげ、リラックスするための方法として取り入れていただきたいと考えています。
心療内科での治療や皮膚への適切なケアは継続しながら、身体の重さ、呼吸のしやすさ、顔の赤み、気分の変化を一つずつ確認していくことが大切です。
今回の症例を通じて、皮膚の症状と身体の状態、そしてメンタル面を別々の問題として捉えるだけでなく、互いの関わりを考えながら身体を整えていくことの大切さを改めて感じました。

※補足:睡眠を改善した介入のランダム化比較試験をまとめた研究では、睡眠の質の改善に伴い、抑うつや不安などの改善が報告されています[参考文献3]。一方、普段から通常の睡眠をとる健康な若年成人27人の睡眠延長研究では、疲労感は軽減しましたが、気分や眠気の有意な改善はありませんでした[参考文献4]。睡眠の質と睡眠時間、疲労感と気分はそれぞれ区別して考える必要があります。これらは今回の方の睡眠不足や、睡眠確保による皮膚症状の改善を示すものではありません。

【まとめ】

医療・皮膚ケアの継続、睡眠、ゆっくり吐く呼吸、やさしい頭部ケアを並べ、変化を分けて確認すると示したまとめ図。

今回の症例では、アトピーによる顔の赤みが前回より落ち着いていた一方で、疲労感や気分の落ち込み、全身の重さが残っていました。実際に身体に触れると、足のむくみや硬さ、頭部の緊張なども確認できました。
私は、こうした身体の状態が呼吸や血流の変化に関わり、顔の赤みやほてり、かゆみなどの皮膚症状にも影響している可能性があると考えました。
そこで、トークセンによる振動刺激や呼吸を促す施術、頭部の緊張を緩める施術を行いました。その結果、ご本人は身体の重さに違いを感じられ、私自身も施術後に顔の赤みが落ち着いているように見えました。
今回の変化から、皮膚の赤みには炎症だけでなく、身体の緊張や血流の変化も関わっている可能性を改めて感じました。ただし、施術によって炎症やかゆみそのものが改善したと確認できたわけではありません。
アトピーや皮膚疾患のケアでは、皮膚への治療だけでなく、呼吸や身体の緊張、睡眠などにも目を向けることが大切だと考えています。皮膚の不快感と心身の負担は互いに影響することがあるため、医療機関での治療を継続しながら、身体を整えるケアも取り入れていくことが、より楽に過ごせる状態につながるのではないかと感じています。

参考文献

1. Zaccaro A et al. How Breath-Control Can Change Your Life: A Systematic Review on Psycho-Physiological Correlates of Slow Breathing. Frontiers in human neuroscience. 2018. DOI: 10.3389/fnhum.2018.00353
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30245619/
呼吸の調整は生活をどう変えるか―ゆっくりした呼吸の心理・生理的関連についての系統的レビュー。
健康な人の毎分10回未満の呼吸を扱う15論文をまとめ、自律神経指標の変化やリラックス、不安の軽減などを報告しています。本文(1)の呼吸と心理状態の関係に関連しますが、今回の呼吸誘導、身体の重さ、アトピーの顔の赤みへの効果を証明するものではありません。

2. Manzoni GM et al. Relaxation training for anxiety: a ten-years systematic review with meta-analysis. BMC psychiatry. 2008. DOI: 10.1186/1471-244X-8-41
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18518981/
不安に対するリラクゼーション訓練―10年間の系統的レビューとメタ解析。
筋弛緩法、自律訓練法、瞑想などを扱う27研究をまとめ、不安の軽減を報告しています。ランダム化比較試験だけでなく、観察研究や対照群のない研究も含みます。本文(1)のリラクゼーションと心理状態の関係に関連しますが、徒手施術や筋緊張の変化だけの効果、皮膚症状への効果を示すものではありません。

3. Scott AJ et al. Improving sleep quality leads to better mental health: A meta-analysis of randomised controlled trials. Sleep medicine reviews. 2021. DOI: 10.1016/j.smrv.2021.101556
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34607184/
睡眠の質の改善はメンタルヘルスの改善につながる―ランダム化比較試験のメタ解析。
計8,608人を含む65試験をまとめ、睡眠を改善した介入による抑うつ、不安、ストレスなどの改善を報告しています。本文(3)のうち睡眠と心の健康の関係に関連しますが、睡眠時間を確保するだけの効果や、今回の施術・アトピーへの効果を示すものではありません。

4. Mantua J et al. Sleep extension reduces fatigue in healthy, normally-sleeping young adults. Sleep science (Sao Paulo, Brazil). 2019. DOI: 10.5935/1984-0063.20190056
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31105891/
睡眠時間の延長は、通常の睡眠をとる健康な若年成人の疲労感を軽減する。
健康な若年成人27人で、就床時間を8時間から10時間に延ばした前後を比較しました。7夜の延長後に疲労感は軽減しましたが、気分や眠気の有意な改善はありませんでした。本文(3)の睡眠と疲労感に関連しますが、今回の方の疲労の原因や、身体の重さ・皮膚症状への効果は示していません。

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
・統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

アトピーの症例について詳しくはこちら

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