寝る前のかゆみと手のむくみ感|手指や腕のこわばりに着目した症例

寝る前になるとかゆくなる。でも、どうしたらよいかわからず、我慢したり、つい掻いてしまったりすることはありませんか。

そんなとき、手指や腕のこわばりにも目を向けてみてください。今回の症例では、かゆみや手のむくみ感に、手指や腕の硬さが関わっている可能性に着目しました。

寝る前のかゆみと、手のこわばりや動かしにくさ。これらの関係を、実際の症例と施術を交えてひもといていきます。

 

寝る前のかゆみと手のむくみ感から、身体所見と見立て、施術、指の感覚の確認、皮膚ケアと日常の観察までを読む順番に整理した5枚のカード。

【現在の状態】

左手の人差し指と中指に控えめな傷と腫れがあり、右手をそっと添えている文字のない手元の接写。

寝る前にかゆくなり、手が腫れぼったく感じる

今回の患者様は美容師をされており、寝る前にかゆくなることや、手が腫れているような、むくんでいるような感覚についてお話しされていました。

これまでにも、仕事が忙しく疲れがたまる時期にかゆみが出ることがあり、以前には、かゆみを我慢しながら仕事を続けるうちに肘を痛め、テニス肘になった経緯もあります。

こうした経過から、寝る前のかゆみを捉える際には、一日の仕事で手にどのくらい疲れがたまっているか、むくみやこわばりを伴っていないかも、確認する手がかりになります。仕事をした日と休みの日で、かゆみや手の感覚に違いがあるかも見ていきたいところです。

そこで、手指や腕の硬さ、左右の違いを確認しました。

左右で異なる手指の硬さと、負担が集中する部分の傷や腫れ

実際に触れると、手のひらや腕に硬さがあり、指の硬さにも左右差が見られました。

美容師の仕事では、ハサミを持つ手とコームなどを扱う手で、指の使い方が異なります。特に左手の人差し指と中指には負担がかかりやすく、傷や腫れ、炎症もその部分に集中していました。

このように、普段よく使う場所と症状が出ている場所を照らし合わせると、手への負担を捉える手がかりになります。疲れたときにかゆみが出るか、同時にこわばりも強くなるかという点にも注目しました。

また、全身を確認すると、手先・足先や喉にも硬さがあり、ご本人からは呼吸の浅さや口周りの乾燥についてのお話もありました。秋という季節の変化と日々の疲労も踏まえ、手の局所的な負担に加えて、全身の状態にも目を向けました。

【施術者の見立て】

手指や腕、喉や胸まわりの硬さ、本人が感じるむくみ感と浅い呼吸を、施術者の見立てとは別枠で示した図。

かゆみが出るときの、手や腕のむくみ・こわばりに着目

手のひらや腕に硬さがあったため、かゆいときに手や腕がどのような状態になっているかを、一緒に確認しました。ご本人も、かゆみとともに、手が腫れているような、むくんでいるような感覚を自覚されていました。

仕事で手を使い続けた後に、むくみやこわばり、重だるさが出ていないか。私は、こうした手や腕の負担が、かゆみにも関わっている可能性に着目しました。(1)

そのため、かゆみの強さに加えて、指の動かしやすさや腕の硬さも確認の目安にしました。これらが一緒に変化するかを見ていくことで、症状が出るときの体の状態を捉えやすくなると考えたためです。

さらに、手や腕に負担が集中する背景を探るため、全身の状態にも目を向けました。※補足:中等症〜重症のアトピー性皮膚炎患者に頸部の筋緊張を緩める機器施術を行った症例集積では、治療を完了した20人でかゆみなどの改善が報告されています[参考文献1]。比較対照を置かない観察であり、施術による効果を確定するものではありません。今回着目した手や腕のこわばり・むくみ感がかゆみの原因であることや、この症例への施術効果を示した研究でもありません。

喉や胸郭の硬さと浅い呼吸から、全身への対応を考える

手や腕のこわばり、乾燥を捉える際には、その場所への負担に加えて、胸郭の動きや呼吸、神経の働き、内臓を含めた全身の状態との関わりも考慮しています。

今回も、喉に硬さがあり、ご本人には呼吸が浅いという自覚がありました。口周りの乾燥も訴えられていたことから、手や腕だけでなく、呼吸に伴う喉や胸の動きにも着目しました。

施術中には、呼吸の浅さや胸周辺の硬さが、顔や胸の熱のこもりに関わっているのではないかという見立てもお伝えしています。(2)

こうした所見から、今回は腕の硬さへの施術に加えて、喉の周辺や肺を包む胸郭にも働きかけ、呼吸に伴う動きを促す必要があると判断しました。局所の負担と全身の状態、その両方を踏まえて施術を組み立てています。

【施術内容と経過】

胸や肋骨、首や脇、指の関節と手のひらの施術部位、トークセンとカッサ、施術後に尋ねた内容を示す図。

呼吸時の胸の動きを確かめ、トークセンで施術

仰向けになっていただくと、呼吸が浅く、胸まわりに触れると硬さがありました。私は、横になったときの姿勢が胸の動きや手のむくみ感に関わっている可能性を考えました。

そこで、肺まわりの血の巡りを促すことを目的に、タイの伝統施術で使われるトークセンという木槌で、胸や肋骨まわりに振動を加えました。(3)

「肺のうっ血を取り除いた」は施術後の結果を示す表現なので、ここでは**何を目的に、どこへ、どんな施術をしたか**までに絞りました。※補足:重い慢性呼吸器疾患のある15人を対象とした実験では、呼吸のタイミングに合わせた100 Hzの胸壁振動で息苦しさが軽減し、逆のタイミングでは強まりました[参考文献2]。一部の参加者では呼吸量や血液中の酸素・二酸化炭素にも変化がありました。ただし、木槌による施術や喉への刺激を調べた研究ではなく、今回の施術によって肺まわりの血流が促されたことや、うっ血が取り除かれたことを示す根拠にはなりません。

首や脇まわりから指の関節まで、手の動かしやすさを意識して施術する

指のこわばりについては、仕事で繰り返し使う指そのものの負担と、首や脇まわりの緊張が手の力の抜きにくさに関わっている可能性を考えました。そこで、まず首や脇、肋骨まわりの硬さに働きかけ、そのあとで指の関節や手のひらを施術しました。

指の関節まわりにはトークセンで振動を加え、手のひらなど硬さのある部分にはカッサを使いました。指を曲げ伸ばしするときのこわばりを和らげ、手を動かしやすくするためです。

施術の終わりには、指を動かしたときの感覚をご本人に尋ねました。寝る前のかゆみや手のむくみ感については、施術後の日常生活でどう変わるかを、引き続き見ていくことにしました。

【施術を通じての考察】

かゆみ・傷・腫れと皮膚ケアを示す枠、動かしやすさ・重だるさ・むくみ感などを示す枠を並べた図。

かゆみと皮膚の炎症を分けて考える

今回、寝る前のかゆみを考えるうえで手がかりになったのは、ご本人が同じ時間帯に手のむくみ感も自覚していたことです。皮膚に傷や腫れがある場所を確認しながら、かゆくなるときに手や腕がどんな状態になっているかにも目を向けました。

施術を通じて、手指や腕のこわばりに加え、呼吸の浅さや肋骨まわりの硬さも見られました。私は、横になったときの呼吸や胸の動きにくさが手のむくみ感に関わり、その不快感から腕を繰り返し掻いていた可能性を考えています。仕事で負担のかかる指に傷や腫れが集中していたことも踏まえ、手にかかる負担と全身の状態を分けて捉えました。

皮膚のケアとあわせて、手の負担や体調の変化を見る

皮膚に炎症があるときは、薬やスキンケアによる対処が大切です。ケアを続けてもかゆみが残るとき、私は皮膚の経過とあわせて、関節の動かしにくさや手のむくみ感、腕のこわばりが重なっていないかを見ます。

今回のように仕事で手を繰り返し使う方では、仕事の日と休みの日で、夜のかゆみや手の腫れぼったさに違いがあるかも手がかりになります。今後は、施術時に確かめた指の動かしやすさと、日常でのかゆみやむくみ感の経過をそれぞれ見ながら、手にかかる負担や疲れがたまる時期に合わせて、ケアを考えていきます。

【まとめ】

かゆい場所、寝る前の時間や姿勢、そのときの手の感覚を確認し、皮膚ケアとあわせて相談する視点を示した図。

寝る前になると、いつも同じところがかゆくなる。そんなときは、かゆみが出る時間帯や姿勢に目を向けると、症状が出るときの体の状態をひもとく手がかりになります。

今回の症例では、寝る前の腕のかゆみと手のむくみ感を手がかりに、横になったときの体の状態を確認しました。そこで、呼吸が浅く、肋骨まわりに硬さがあることに気づき、手指や腕に加えて胸まわりにも施術を行いました。

「どこがかゆいか」に加えて、「どんなときにかゆくなり、そのとき体はどうなっているか」を見ていく。そこから、その方に必要なケアを考える手がかりが見つかります。

参考文献

1. Hosono S et al. Release of Cervical Muscle Tension Improves Psychological Stress and Symptoms of Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis: a Case Series with 20 Patients.
頸部の筋緊張の緩和と、中等症〜重症アトピー性皮膚炎の心理的ストレス・症状の改善:20人の症例集積。
Dermatology and Therapy. 2022;12(10):2383–2395. DOI: 10.1007/s13555-022-00814-x
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36129669/
https://doi.org/10.1007/s13555-022-00814-x
中等症〜重症のアトピー性皮膚炎患者21人に頸部への機器施術を行い、完了した20人でかゆみ、皮膚症状、心理的負担などの改善を観察した研究です。本文(1)の筋緊張とかゆみという着眼点に間接的に関係しますが、比較対照がなく、手や腕の硬さがかゆみを起こすことや、今回の症例の診断・施術効果までは示していません。

2. Sibuya M et al. Effect of chest wall vibration on dyspnea in patients with chronic respiratory disease.
慢性呼吸器疾患患者の息苦しさに対する胸壁振動の影響。
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. 1994;149(5):1235–1240. DOI: 10.1164/ajrccm.149.5.8173764
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8173764/
https://doi.org/10.1164/ajrccm.149.5.8173764
重い慢性呼吸器疾患のある15人で、胸壁振動と呼吸のタイミングによって息苦しさがどう変わるかを調べた実験です。呼吸に合わせた振動では軽減し、逆のタイミングでは増加しました。8人で調べた呼吸量や血液ガスにも変化がありました。本文(3)の胸まわりへの振動と関係しますが、木槌や喉への施術、肺の血流・うっ血、かゆみや手のむくみ感への効果は検証していません。

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
・統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

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