汗をかくと体がかゆい|汗だけでなく、その時の状況と体の状態に着目した症例

汗をかくと体がかゆくなるとき、汗そのものの影響に加えて、汗をかいた場面や体の状態にも目を向けることがあります。今回は、その時の状況をひもとくことで、姿勢や体のこわばりがかゆみに関わっている可能性に着目した症例です。どのようなやり取りからその見立てに至ったのか、詳しく見ていきます。

肌の悩み、体の見立て、足と顎への施術、確認した反応、セルフケアと経過観察を読む順に整理した五枚のカード。

【現在の状態】

髪の間に見える乾燥した後頭部の頭皮と細かな落屑に、片手の指先をそっと添えたクローズアップ。

薬で楽になっているものの、残っている痒み

薬を使用している間は、痒みが比較的少なくなっていました。ただ、汗をかいた時には頭皮・背中・腰の辺りが痒くなり、頭皮には乾燥や、掻くと皮膚が細かく落ちる落屑もあるとのことでした。

事前のアンケートには、前回より痒みが強まったように感じるという記載がありましたが、お話を伺うと、それほど強い痒みではないという補足がありました。薬で全体的には楽になっているものの、どのような痒みが残っているのかを、具体的に確認しました。

いつ、どこで、何をしている時に痒くなったか

最近、掻きすぎた場所について伺うと、右足の痒みが話題になりました。いつ、どこで、何をしていたかを一つずつ尋ねると、前日の夜、ベッドの上に座ってタブレットを見ていた時に痒くなったとのことでした。

汗をかいた時の痒みに加えて、こうした具体的な場面も確認しました。同じ姿勢や作業をしている時に繰り返すのか、その日だけだったのか。その後の経過と照らし合わせるため、まずは実際に痒みを感じた状況を整理しました。

痒み以外に見られた、体のこわばりや左右差

体の状態について伺うと、ご本人にも、体が固まっていたという心当たりがありました。また、最近、顎に力を入れることがあったというお話もありました。

実際に確認すると、足裏には硬さやむくみがあり、土踏まずの隙間にも左右差が見られました。足裏は左より右が硬く、腰も右側に硬さがありました。顎周辺にも硬さや押した時の痛みが見られました。

このように、残っている痒みと、それが出た場面、体のこわばりや左右差を整理したうえで、何が関わっているのかを考えました。

【施術者の見立て】

右足がかゆかった夜の発汗は未確認と示し、足と顎の観察所見を実線枠、かゆみとの関わりの仮説を点線枠に分けた図。

汗そのものの影響か、汗をかく時の体の状態か

汗をかくと痒くなるというお話から、私は、汗そのものの影響に加えて、汗をかく時の姿勢や体のこわばりが関わっていないかを考えました。(1)

今回、右足が痒くなったのは、夜、ベッドの上でタブレットを見ていた時でした。必ずしも汗をかくような場面ではなく、実際に汗をかいていたかも分かりません。そのため、残っている痒みをすべて汗によるものと捉えず、それぞれの場面で体がどうなっていたかを確認する必要があると考えました。

ご本人にも体が固まっていたという心当たりがあったため、同じ姿勢を続けている間のこわばりや負担にも目を向けました。

※注釈:中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者に、機器を用いて首の筋緊張を緩める介入を行った症例集積では、治療を完了した20人で痒みや皮膚症状、心理的負担の改善が報告されています。ただし、比較対象のない研究で、姿勢やこわばりが痒みの原因であることや、今回の施術の効果を証明するものではありません。また、心理的負担の軽減が痒みの改善をもたらしたかどうかも、この結果だけでは確定できません。(1)

右足の痒みと、硬さ・むくみの左右差を照らし合わせる

右足の痒みに対して手がかりになったのは、足の状態に左右差があったことです。足裏は左より右が硬く、土踏まずの隙間にも違いがありました。つま先立ちでは右側の震えが目立ち、足首の動きにも不安定さが見られました。

痒くなった側に、硬さやむくみ、動きにくさが重なっていたことから、私は、こうした足の状態が右足の痒みに関わっている可能性を考えました。(2)

ベッドやタブレットそのものが問題というより、その時間までに足への負担がたまり、座って過ごす間に不快感が出ていたのではないか。その見立てから、まず足裏や足首の状態を整え、前後の感覚を確かめることにしました。

※注釈:血液透析を受けている90人を対象にした比較研究では、足のリフレクソロジーマッサージによる痒みの軽減が報告されています。ただし、透析患者を対象とした研究であり、この記事で観察した足の硬さ・むくみ・動きにくさが痒みの原因であることや、それらへの施術で痒みの再発を防げることを示すものではありません。(2)

頭皮や背中の痒みに対して、食いしばりにも目を向ける

頭皮や背中の痒みについては、顎周辺の緊張も手がかりにしました。ご本人から最近顎に力を入れることがあったと伺い、実際に触れても硬さや押した時の痛みが見られたためです。

私は、食いしばりに伴う顎の緊張が首や頭まわりのこわばり、姿勢にも関わり、痒みが出る時の体の状態に影響しているのではないかと考えました。(3)

そこで、痒い場所だけでなく顎周辺も施術し、緊張が和らいだ時に頭や首まわりの感覚がどう変わるかを確認することにしました。その反応と、その後の痒みの経過を照らし合わせながら、関わりを見ていく方針です。

※注釈:食いしばりなどの評価に関する国際合意では、本人の申告や筋電図などを用い、筋活動を連続的に捉える考え方が示されています。今回の本人のお話や触診所見だけで、食いしばりの程度や痒みとの関係が確定するわけではありません。(3) また、顎関節症の症状がある人を対象とした8試験のレビューでは、徒手療法による痛みや口の開きやすさの改善が示されていますが、根拠の強さは手技によって異なります。これは顎周辺への施術を考える際の参考であり、頭皮や背中の痒みへの効果を示す研究ではありません。(4)

【施術内容と経過】

左右の足のセルフチェック、足と顎への施術、本人が感じた反応を並べ、皮膚の観察と未確認のかゆみの経過を別に示した図。

まずセルフチェックで、足のこわばりや左右差に気づく

今回は、施術の前に、ご自身で足の状態を確かめていただきました。足裏には硬さやむくみが見られましたが、ご本人には、その状態への自覚があまりなかったためです。

足指を握ったり開いたりして動かしやすさを確認し、テニスボールで足裏を押して、左右の硬さや感じ方を比べました。すると、ご本人も左より右の方が硬いと感じていました。足裏を前方・中央・かかと寄りに分けてほぐした後には、少しアーチができた感じがあるという反応もありました。

私が大切にしたのは、痒みだけでなく、その前にあるこわばりや重さにも気づいていただくことです。自覚している感覚と、実際に動かしたり触れたりした時の状態を照らし合わせるため、セルフチェックを先に行いました。その後、うつ伏せで足指の間や足裏などを施術しました。

※注釈:健康な成人24人の小規模な無作為化比較試験では、テニスボールで両足の足裏を刺激した直後に、座って前に手を伸ばす柔軟性テストの成績が改善しました。足裏のセルフケアに関連する研究ですが、今回感じられたアーチの変化や、むくみ・痒みの改善、効果の持続を確かめたものではありません。(5)

押した時の痛みを手がかりに、顎周辺の緊張を緩める

体全体に触れながら、硬さだけでなく、押した時にどのように感じるかも確認しました。普段はこりや痛みを感じていなくても、触れて初めて気づく負担があるためです。押した時の痛みは、ほかの所見と併せて、施術する場所を考える手がかりにしました。

中でも顎周辺は、軽く触れても痛みの反応が大きい場所でした。ご本人にもその硬さや感じ方を確認していただきながら、手で緊張を緩め、口を開けた状態で頬骨の下なども施術しました。

施術後には、顎が楽になったことを確かめるやり取りがありました。緩める前後を比べることで、それまで顎に力が入っていたことや、重さがあったことにも気づいていただく機会になりました。

その場の反応に加え、自宅で取り組んでいたケアについても振り返りました。

続けていたケアの変化を確認し、今回のセルフケアにつなげる

前回からの1週間は、アイロン療法によるケアを続けていただいていました。今回確認すると、皮膚のぼこぼこと盛り上がっていた部分が、以前より平坦になってきていました。薬も使用しているため、ケアだけによる変化とは分けて捉えながら、皮膚の状態や熱の感じ方を伺いました。

今回は、足裏の硬さやむくみに気づいていただけたことから、テニスボールで足裏をほぐすこと、足指をグー・パーに動かすこと、足首を回すことをご案内しました。また、頭を軽くタッピングする方法や、顎周辺をほぐす方法もお伝えしました。

痒くなった時だけ対処するのではなく、普段から足のこわばりや顎の緊張に気づき、ケアの前後で動かしやすさやすっきり感を確かめていただく。そのようなセルフケアにつなげて、今回の施術を終えました。

【施術を通じての考察】

確認済みの足裏の感覚と顎の楽さ、これから確認するかゆみの場所・頻度・場面や体の張りを二列に分けた図。

汗をきっかけに、体の状態にも目を向ける

今回は、汗をかくと痒くなるというお話でしたが、実際に体を確認すると、足裏の硬さやむくみ、食いしばりに伴う顎周辺の緊張が目立ちました。私は、こうしたこわばりや巡りの悪さが、頭皮や背中などの痒みに関わっているのではないかと考え、まずその負担を減らすよう施術しました。

足裏のケア後にはアーチの感じに変化があり、顎周辺を緩めた後には楽さを確認できました。この反応から、普段は自覚していなかった硬さや緊張があったことを、ご本人と共有できました。ただし、その場で体が楽になったことと、汗をかいた時の痒みが減ることは、今後照らし合わせていく必要があります。

汗は痒みが出る時のきっかけであり、その背景には、その時の姿勢や体のこわばりが重なっていたのかもしれません。今回の施術では、その可能性を考え、今確認できる体の状態に対して働きかけました。

今後1〜2週間、同じ場面での痒みを確認する

一方、汗をかいた時に何をしていたのか、頭皮・背中・腰が同時に痒くなるのか、場面によって場所が変わるのかは、まだ十分に把握できていません。今後は細かく連絡を取り合い、痒みが出た状況と、その時の体の状態を確認していきたいと考えています。

まずは今回確認できた足のむくみやこわばり、顎周辺の緊張に対するケアを続けながら、次の1〜2週間、日常で同じように汗をかいた時や、同じ姿勢で過ごした時に、痒みがどう出るかを見ていきます。

痒みの強さだけでなく、出る場所や頻度、その時の張りや重さにも変化があるか。施術とセルフケアの後の経過を具体的に伺い、その反応を次の見立てや施術につなげていくことが、今回の大切な確認点です。

【まとめ】

時刻・場所・していたこと、発汗、体のこわばりを記す空欄と、それぞれに対応するアイコンを配置した観察カード。

今回は、「汗をかくと痒い」というお話から、実際にいつ、どこで、何をしていた時に痒くなったのかを詳しく伺いました。すると、右足の痒みはベッドでタブレットを見ていた時に出ており、必ずしも汗をかいていたとは限らない場面でした。体を確認すると、足の硬さやむくみ、顎周辺の緊張も見られ、こうした負担に着目して施術を進めました。

「汗で痒い」という言葉から、汗だけに原因を求めず、汗をかくたびに痒くなるのか、特定の場面で出るのか、その時の姿勢や体の状態はどうだったのかを具体的にたどる。汗そのものの影響と、汗をかく場面に重なっている負担を考えるには、こうした観察が手がかりになります。

参考文献

(1) Hosono S et al. Release of Cervical Muscle Tension Improves Psychological Stress and Symptoms of Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis: a Case Series with 20 Patients.(頸部筋緊張の緩和と中等度から重度のアトピー性皮膚炎の心理的ストレス・症状の改善:20人の症例集積)Dermatology and therapy. 2022. DOI: 10.1007/s13555-022-00814-x. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36129669/
首の筋緊張を緩める機器による介入を21人に行い、完了した20人で痒み、湿疹、心理的負担などの改善を報告しました。本文の筋緊張への着目に関連しますが、比較群がなく、今回の症例の原因や施術効果は確定できません。

(2) Shahriari A et al. The effect of foot reflexology massage on pruritus in hemodialysis patients.(血液透析患者の痒みに対する足のリフレクソロジーマッサージの効果)Journal of education and health promotion. 2021. DOI: 10.4103/jehp.jehp_494_20. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34084828/
痒みのある透析患者90人を介入群と対照群に分け、週3回、計9回の足へのマッサージを調べた準実験研究で、痒みの軽減を報告しました。本文の足への介入に関連しますが、足の硬さが局所の痒みを起こすことや、再発予防は示していません。

(3) Lobbezoo F et al. International consensus on the assessment of bruxism: Report of a work in progress.(ブラキシズムの評価に関する国際合意:進行中の取り組みの報告)Journal of oral rehabilitation. 2018. DOI: 10.1111/joor.12663. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29926505/
睡眠中・覚醒中の食いしばりなどの定義と評価方法を整理した合意文書です。本人の申告や筋電図などの利用を示しており、本文の問診・触診による見立ての限界に関係します。顎への施術や痒みへの効果を調べた研究ではありません。

(4) Calixtre LB et al. Manual therapy for the management of pain and limited range of motion in subjects with signs and symptoms of temporomandibular disorder: a systematic review of randomised controlled trials.(顎関節症の徴候・症状がある人の痛みと可動域制限に対する徒手療法:無作為化比較試験のシステマティックレビュー)Journal of oral rehabilitation. 2015. DOI: 10.1111/joor.12321. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26059857/
8試験をまとめ、徒手療法による痛み、最大開口量、押した時の痛みの閾値への効果を検討しました。改善を支持する根拠は手技によって異なり、研究方法にもばらつきがあります。本文の顎周辺への施術に関連しますが、この症例での顎の楽さや皮膚の痒みへの効果を証明するものではありません。

(5) Grieve R et al. The immediate effect of bilateral self myofascial release on the plantar surface of the feet on hamstring and lumbar spine flexibility: A pilot randomised controlled trial.(両足底のセルフ筋膜リリースが太もも裏と腰部の柔軟性に及ぼす即時効果:予備的無作為化比較試験)Journal of bodywork and movement therapies. 2015. DOI: 10.1016/j.jbmt.2014.12.004. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26118527/
健康な成人24人を対象に、足裏へのテニスボール刺激後の柔軟性テストで対照群より改善が見られました。本文の足裏のセルフケアに関連しますが、筋膜を介した作用機序の確定、アーチやむくみの改善、頭部の感覚や痒みへの効果は示していません。

 

ページ監修者:阿部英雄

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英気治療院代表

【保有資格】
・鍼灸あん摩マッサージ指圧師
・はり師、きゅう師
・アスレチックトレーナー
・電磁波測定士1級
・サプリメントアドバイザー
・スキンケアアドバイザー、カウンセラー
・統合医療認定師

【学会発表・研究会発表】
テーピングと温熱療法を用いた足部へのバランス改善による下肢掻痒感へのアプローチ
手技療法による内臓調節と姿勢調節を目的と頸部と上肢のアトピー性皮膚炎1症例について
鍼灸パルスと手技療法による筋緊張緩和によって背部掻痒感が緩和した1例。
アトピー性皮膚炎の多元的アプローチによる1症例

【書籍】
・女性自身 湯たんぽケア
・Tehamo フォーカルジストニアについての考察

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